iPhone Xが「1000ドル」「超品薄」になる必然 有機ELパネルの供給量が十分ではない

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価格の問題はともかくとして、パネルが需要を満たすよう円滑に供給されていくのかも問題となる。

例えば、朝鮮半島情勢の緊迫化で、万が一交戦という事態になれば、経済活動そのものが停滞する可能性があり、アップルが有機ELパネルの供給を受けられないリスクをはらんでいる。もちろん、アップルによる現状でのリスク回避は不可能だ。

アップルはすでに「有機ELの次」と言われているマイクロLEDへの研究開発や投資を行っている。また米国のドナルド・トランプ大統領と鴻海精密工業のトップ、テリー・ゴウ氏が記者会見で発表した、ウィスコンシン州でのディスプレイパネル工場建設は、アップルの米国製パネルの採用の可能性をにおわせる。

第3のポイントは発売日だ。例年のスケジュールと今年のカレンダーから予測すると、9月12日のイベント開催後、9月15日に予約開始、そして1週間後の9月22日にiPhone発売、というスケジュールが組まれることになりそうだ。

日本も、新型iPhone最速発売の国になる

アップルは円滑な供給を行うため、iPhone発売日に発売する国を10カ国前後に限ってきた。メインの市場である米国、第2の市場となる中国、そして英国やドイツなどの西欧諸国に加えて、日本も最初の発売国のリストに含まれてきた。

今回の新型iPhoneについても、日本は最初の発売国に入ってくると考えられる。となると、日本は時差の関係で、ニュージーランドや豪州とともに、もっとも早いタイミングで発売される国になることが考えられる。そのため、世界のメディアから注目が集まるだろう。

iPhoneは、発売後しばらくは目玉のモデルが品薄となり、手に入れにくい状況が続くことが多い。例えば筆者が住む米国であっても、iPhone 7 Plusのブラックモデルは、9月の発売から2カ月たっても店頭在庫が揃わない状況が続いてきた。

入手しにくいのは毎年のことだが、有機ELディスプレイパネルを採用する最上位のiPhoneについては、その供給数がさらに厳しくなることが考えられる。発売されてもしばらくは入手できる人はほんの一握りになる可能性が高そうだ。

今回は有機ELモデルの発売国リストだけは、他の2種類のiPhoneとは別に用意される可能性もある。もしそうであったとしても、日本が最初の発売国に含まれるのではないか、と筆者は考えている。アップルは、これまで一貫して日本市場を重要市場と位置づけてきており、その姿勢は変わらないだろう。

イベント当日、Steve Jobs Theaterからのリポート、新型iPhoneの詳細レビュー、その他新製品のレビューを掲載していきます。また、さらに深い情報をほしい読者の皆さまには、松村太郎のシリコンバレー最新リポートもあわせてお読みになることをおすすめします。
松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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