味の素、冷凍ギョーザが担う世界戦略の重責 日本式の焼きギョーザは欧州を席巻できるか

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焼きギョーザを世界に広められるか?

味の素冷凍食品にとっても、ギョーザは重要な戦略商品となっている。味の素グループの冷凍食品事業の国内と海外の合算売上高は約2000億円。日本水産やニチレイに比べて規模は小さいが、冷凍ギョーザに限れば国内で約50%と圧倒的なシェアを誇る。

国内の冷凍食品市場はほぼ横ばいにとどまるが、冷凍ギョーザに限れば落ち込む年もあるが、おおむねプラス成長を維持している。

味の素冷凍食品は来る50周年に向けた拡大策の一環として、この7月にロゴやブランドビジョンを刷新。同7月中~下旬の期間限定でJR両国駅に「ギョーザステーション」を出店するなど、販促活動を積極化させている。

一方、味の素グループとしては成長の見込める海外展開にも手を打つ。2019年度までの中期経営計画では、海外売上高を5274億円と2016年度比で約1000億円増やす計画を掲げるが、その重点戦略を担うのが冷凍食品事業だ。

2014年に米国の冷凍食品メーカーであるウィンザー社を約840億円で買収。買収効果も加わり、北米ではギョーザなどを含むアジア系冷凍食品の分野では市場シェアの4割ほどを握るようになった。

次に狙うのが欧州市場の開拓だ。味の素冷凍食品の推計によれば、欧州の冷凍食品の市場規模は約5.2兆円に達する。このうち、ギョーザを含むアジア系冷凍食品の市場規模は640億円ほど、このうち6割ほどが家庭用向け市場だ。わずか1%強の規模にとどまるが、近年は2ケタ成長を続けているという。

特にギョーザは伸び代が大きい。「小麦粉で作った皮で肉と野菜を包む料理なので、日本食の中でも特に栄養バランスもよくヘルシーだと思われているのではないか」と大田氏は話す。

だが、味の素グループの欧州食品事業の売上高は2016年度で約58億円。冷凍食品の販売が主で、そのほとんどが日本食レストランなど向けの業務用だ。

本格的な市場参入のためには「家庭用の販売チャネルを持っていないことが課題だった」(大田氏)。そこで親会社の味の素は7月、フランスの冷凍食品メーカー、ラベリ・テレトル・スージェレ社を買収。「北米の次は、欧州をターゲットに冷凍ギョーザを広めていく」(味の素冷凍食品の吉峯社長)方針だ。

かつて世界に「Ajinomoto」を広めたように、日本式の焼きギョーザを世界に広めることができるのか。GYOZA IT.の成否が、ひとつの試金石となりそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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