中国はなぜ北朝鮮の暴走を止められないのか

「世界史」から考える、北ミサイル問題

ちなみに、「満州」という地名は中国ではタブーで、「中国東北地方」と表現されます。中国はもともと異民族である満州人の独立運動を恐れているからです。実質、日本軍が建てた満州国については、「偽満州国」と書きます。日本の教科書にも影響が及んでいて、「満州」ではなく、「東北」という言葉を使いたがります。存在をなかったことにしようという話ですから、満州人に失礼な感じもします。

漢民族は、満州やモンゴルといった北方アジア系の民族をのみ込み、今の中国をつくりあげました。こうした歴史を振り返ってみると、中国はモンゴルや満州の先にある朝鮮も同じようにのみ込む対象と見ていたといっていいでしょう。歴史的に見て、朝鮮民族にとって最大の脅威は地続きの中国であり、このことが現在の中朝関係にも影響を与えているのです。

中国は北朝鮮の友好国なのか?

では、現在の中国と北朝鮮の関係性はどうなっているのでしょうか。

中国と北朝鮮は同じ共産主義であり、朝鮮戦争のときには中国は北朝鮮に加勢し、韓国やアメリカとも一戦交えました。近年も中国は北朝鮮にパイプラインで原油を供給しています。また、中国にとって北朝鮮は、在韓米軍から身を守る緩衝地帯の役割を果たしています。

こうした関係性から、中国と北朝鮮は「仲がよい」というイメージをもつ人もいますが、現実はそう単純ではありません。

中国と北朝鮮の国境は、鴨緑江という川で隔てられています。かなり水深の浅い川なので、夏は簡単に渡ることができますし、冬には川面が凍るので歩いて渡れます。比較的、自由に越えることができる国境なのです。そのため、かつての朝鮮人は新天地を求めて、続々と満州に移住してきました。

朝鮮民族は南北朝鮮だけでなく、中朝国境の北側にも住んでおり、その数は数百万人に達するといわれています。彼らはキムチや焼き肉を食べ、朝鮮語を話します。中国ではこの朝鮮人居住区を「延辺(えんぺん)朝鮮族自治州」と呼んでいます。

現在は国が割れていますが、朝鮮民族は「朝鮮統一の夢」を抱いています。それは南北朝鮮統一だけではありません。満州の延辺朝鮮族自治州も加えたものです。

ただ、仮にこれが実現するようなことがあれば、ほかの北方アジア系の民族が黙ってはいないでしょう。

「朝鮮人が自分の国をつくったのなら、オレたちも」と満州人やモンゴル人(内モンゴル)も声を上げる。そうなったら、中華人民共和国は崩壊するかもしれません。だから中国は、絶対に朝鮮の統一国家は認めません。今のように分断されたままのほうが都合がいいのです。

こうした状況からいえるのは、中国にとって朝鮮は、基本的に「敵」だということです。中国が、北朝鮮を経済的に支援していることから、友好関係にあるように見えますが、実際のところ、中国は北朝鮮を敵視しています。経済支援をしているのも、北朝鮮の政権が自然崩壊し、朝鮮半島が統一されたら困るからです。

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