取引が急拡大する「チケットキャンプ」の功罪

チケット「高値転売」目的購入の根深い問題

ビジター応援席のチケットを大量に出品していたある出品者は、2016年5月から2017年5月までの評価が合計1300件超。1年単位で考えると1日当たり3.5件超の取引を成立させている計算になる。取引と同時並行で仕入れをし、チケットの発送もしながらである。

今年7月からは、直近の評価を重視するという目的で、過去の評価表示を直近100件に変更したが、それでも「評価99+」の出品者は大半が3週間~5週間程度で100件の取引を成立させており、1日当たりの取引成立件数は3~5件である。

7月31日に東京ドームで開催された、福岡ソフトバンクホークスのイベント付きゲーム「鷹の祭典」のチケットの出品者にも「評価99+」が大量に出没した。1年で1000件以上の取引を成立させていた出品者はここにもいた。「鷹の祭典」は、ヤフオク!ドームでは5回開催されるが、東京開催は毎年1回。無料のユニホームや応援グッズの配布があるので、チケットはプラチナ化する。

ファンクラブで優先購入し、転売する流れ

ファンクラブ優先受け付け中にほぼ完売、一般受付開始時点では立ち見とユニホーム配布がないビジター応援席しか残っていない超人気カードだ。チケキャンはチケットの購入ルートの明示も義務づけているため、出品者がどこから購入したかもわかるのだが、「評価99+」の出品者の大半が「ファンクラブ」だった。ファンクラブ優先受け付け開始とほぼ同時にチケキャンへの出品が始まっているのは、ゲッターは会費を負担してファンクラブ会員となり、優先受付枠で大量のチケットを仕入れているからだろう。

それでもファンクラブ優先枠で買えるチケットは最大6枚でしかない。しかも福岡ソフトバンクホークスは複数口での入会を禁止している。それでも大量に仕入れることができるのは、偽名を使って複数口入会しているから、という可能性も考えられる。

プロ野球12球団でファンクラブ入会の際に、何らかの身分証明書(ID)の提示を求めている球団はない。クレジットカード決済でなら本人確認も可能だが、公式ショップや本拠地球場の窓口でも入会を受け付けており、その場合、会費は現金払いになる。偽名での複数口入会は技術的に可能だ。

それなら球団はゲッター撲滅のためにファンクラブ入会の際にIDの提示を義務づけるべきなのかというと、それは本末転倒だと筆者は思う。ファンクラブはファンの裾野を広げる使命を負っているのに、ハードルの引き上げはその阻害要因になる。

そもそもファンクラブの会費収入は球団収益への貢献度は低く、球団にとって会費収入のためにゲッターの入会を容認するインセンティブはない。要はチケキャンがゲッターの跋扈(ばっこ)を放置しなければ済む話であって、出口をふさげばゲッターは複数口の会費を負担するメリットがなくなる。

「評価99+」の出品者の多くは「本人確認済み」、すなわちチケキャンがIDを確認している出品者である。筆者はチケキャンに会員登録をしているが、自宅では受け取りが遅れるので、仕事場を登録住所にしているのだが、そのためにIDと住所が一致せず、本人確認登録はできなかった。つまり、チケキャンは売買目的の可能性が極めて高い、おびただしい件数の出品者の住所も名前も、そして手にした金額も把握している。のみならず、ゲッターの中には「プレミアム会員」として、販売手数料の割引という形で優遇を受けているユーザーがいる可能性を疑う声もある。

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