世界シェア計70%、3Dプリンタが開く未来図 注目の海外企業(2) 3Dシステムズ社、ストラタシス社

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両社は、これからも3Dプリンタの用途や顧客分野を新たに開拓していかねばならない段階にある。したがって、積極的な市場開拓のために、多額の販売費を投じている。研究開発費を除く販売管理費が売り上げの30%相当と大きく、そのために、粗利率が高いにもかかわらず、今のところ高い営業利益を確保しているとは言いがたい。ストラタシス社は1999年以降、営業段階での黒字を維持しているが、3Dシステムズ社はこの間、営業赤字の年が少なくなかったのだ。

これまでの両社の売り上げの成長は、同業メーカーの買収によりその売り上げが加わったことが主な理由だった。しかし、業界再編が落ち着いた後には、安定した成長が可能だと考えられる。

3Dプリンタメーカーの売り上げは、本体の装置の売り上げ、樹脂などの製造材料の売り上げ、そしてメンテナンスなどのサービス収入の3本立てである。このうちの製造材料とサービスについては、過去に自社製品を購入した既存顧客も対象となるため、安定した収益源になる可能性が高い。この構図は、コピー機メーカーの収益構造の例に見られるとおりである。

3Dプリンタは製造業を変えるか?

昨今の3Dプリンタへの高い関心は、趣味の分野での「新しいオモチャ」の登場による一時のブームで終わるのだろうか。それとも、さらに産業用途での使われ方が広がり、深まって、製造業のありようそのものに新しい局面をもたらすのだろうか。

3Dプリンタと設計データがあれば、簡単に立体物が作れるとなると、メーカーにとって大規模な生産設備は不要になるだろうか。話はそう簡単ではないようだ。3Dプリンタは造形に時間がかかるため、量産するための装置にはなりにくい。ただ、多品種少量生産に向く特性が生かせる用途が数多く見つかれば、3Dプリンタ活用の道は大きく広がる。たとえば、患者一人ひとりの形状に合わせて作らねばならない医療関連の機器・用具など(たとえば、人工関節)のようなケースである。

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