人口減時代の経営戦略を真剣に考えるべきだ コラボ経営・変身経営・駆逐艦経営のススメ

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にもかかわらず富士フイルムだけは、生き残るだけでなく、大いに発展成長をしています。富士フイルムが、危機感の中から考え出した新規事業のひとつが、化粧品でした。

なぜ化粧品なのかというと、もともとあの薄いフイルムは数枚の層でできているということですが、その数枚の層を重ね合わせる「糊」がコラーゲン。その作業をする人たちの手がどんどんときれいになる。ということで、これは化粧品を考えてみよう。それが、フイルム会社が化粧品をつくるキッカケだったそうです。いまや全社の売り上げに占める割合は25%にも及んでいます。

しかし、富士フイルムはそこにとどまらず、製薬事業の強化にも取り組んでいます。富山化学工業などを実質的に買収し、総合ヘルスケア企業への変身を目指しているのです。もちろん「変身経営」は、以前から、多くの会社が試みて、成功しています。

これからの「地殻大変動の時代」を考えると、「変身経営」をつねに心掛けておく必要があると思います。

「駆逐艦経営」とは?

3つ目が「駆逐艦経営」です。「変身経営」を円滑に実行、実践するための経営戦略が、駆逐艦経営です。いわゆる「大艦巨砲経営」ではなく、規模拡大を抑える経営をする。それによって「目が覚めたら風景が激変している時代」に即対応できる機敏さを確保する。そして、いたずらに「規模の経営」を求めないようにするべきなのです。

今までは、規模の大きいところが、大企業でした。売り上げ、従業員数、資本金の大きさ、本社、事業場の大きさなどが、その要件でした。しかし、これからは、「1人当たりの利益」を物差しにするべきでしょう。大きいけれど、赤字経営だとすれば、それは独活(うど)の大木、「岩石企業」にすぎません。従来の物差しからすれば小企業かもしれませんが、新しい「1人当たり利益」の物差しを使えば、圧倒的に高い利益を上げる「ダイヤモンド企業」を目指す。そして、そのような会社こそが「大きい会社」ということです。

1万人の会社でも1人当たりの利益が小さい、あるいはマイナスの会社は、図体が大きいだけで「大企業」とはいわない。100人の会社でも、1人当たりの利益が、はるかに大きい会社は「大企業」、いわゆる「ダイヤモンド企業」というべきでしょう。

このような「駆逐艦経営」を実行している親しい友人の若い経営者は、5社を鵜匠のように巧みに操り、成長拡大をしています。またもう一人の若い経営者は3社を経営して大きな成功をしています。

「コラボ経営」「変身経営」「駆逐艦経営」。こうした切り口で自社の現在の事業を見直してみてはいかがでしょうか。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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