女性の「解雇規制緩和」のススメ 「育休3年」に異議あり!

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2013年現在、65歳までの定年延長が法制化され、今後の日本型大企業は大量のAタイプを抱え込むことが予想される。「追い出し部屋」などのエグい手法を採ってもAタイプ人材の自主退職誘導には限界があると思われ、政府の有識者会議では「成長戦略」としての「解雇規制緩和」が提言された。要するに「65歳まで雇わなきゃいけないのなら、雇いつづける価値のある人材だけを選ばせてほしい」ということなのだろう。

同様に、「女子は結婚退職が不文律」だった時代には、女はDタイプがほとんどであり、レッドゾーン人材になるまえに自主退職してくれた。育児休業法の効果もあり、公務員や大企業正社員となった女子は、結婚はおろか出産後も会社にしがみつくものが増えてきた。出産までにスキルを身に付けて「スターゾーン」まで成長したBタイプならば、出産後に「労働時間制限あり」となっても「熟練労働者」として企業としては雇用を継続する価値はある。

しかし、特にスキルのないまま出産に至り「スキルなし+労働時間制限あり」のレッドゾーン人材が「解雇規制緩和」の対象になるのは仕方のないことだと私は思う。「有能は厚遇、低能は冷遇、無能は淘汰」が健全な労働市場である。「妊娠解雇されたくなければ、就職~妊娠の間ぐらいは目いっぱい働いてスキルを磨くべき」だし「スキルのない人材は妊娠を契機に新人に席を譲るべき」と私は思う。

もし、仮に「スキルのない女子正社員が妊娠したら、カネ(基本給×雇用年数など)を渡せば解雇可能」となった場合を考えてみよう。(図2)に関して言えば、A妻は2度目の妊娠あたりで解雇される可能性が大であるが、B妻の再就職は今より容易になるだろう。解雇規制緩和によって企業がもっと気軽に社員を雇えるようになれば、B夫やC子のサービス残業は減るだろうし、D夫妻にも就職のチャンスが増える。

一見「カネで解決なんてひどーい!」ようにも思われるが、現状で「妊娠したら、ため息や舌打ちで精神的に自主退職に追い込む」ような職場では、事実上、「女性の待遇向上」となる。なによりも子育てにはカネが要るし、妊娠した女はそれなりに強く現実的になるので、案外あっさりと受け入れられると思う。

女性が長く働ける社会(≠長く働ける会社)を目指そう

「成長戦略」=「規制緩和」ならば、「女性活用」=「女性の雇用規制緩和」なのである。育児休業法のように、一見、女性を保護するようで、実は多くの女性を苦しめている法律はさっさと廃止すべきである。女性の生涯を無理やり1社に縛り付けるのではなく、「女性を解雇しやすくする」=「女性がライフステージに応じて転職・再就職しやすくなる」と考えるべきである。解雇は敗北ではなく失恋のようなものである。解雇そのものはつらいことだが、人生設計を見直して成長するチャンスでもあり、より自分にぴったりの新たな職場に出合うためのステップと考えるべきである。われわれが目指すべきなのは「女性が長く働ける社会」であり、それは決して「女性が長く働ける会社」と同義ではない。

筒井 冨美 ノマドドクター

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つつい ふみ

地方の一般的家庭に育ち、小中高大とも国公立卒。米国留学、大学講師を経てフリーランス麻酔科医。医学博士。日米の心臓麻酔専門医。テレビ朝日ドラマ「ドクターX」取材協力

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