北朝鮮、6回目の核実験強行は何をもたらすか 長距離核ミサイルの完成が近づいている

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北朝鮮による核実験は、昨年9月に続いて6回目。日本時間の3日午後零時半ごろ、北朝鮮北東部の豊渓里付近で地震が観測された。米地質調査所によると、地震の規模を表すマグニチュードは6.3と、昨年9月の前回実験の5.3よりもはるかに大きな規模だった。日本の気象庁は、前回の10倍以上の大きさと分析している。

小野寺五典防衛相は記者団に対し、「推定出力は70キロトンになると考えられ、過去の実験に比べてはるかに大きなものと認識している。今回の実験が水爆だったことも否定できない内容だったと考えている」と述べた。70キロトンは広島に投下された原爆の4倍以上、長崎の3倍以上。北朝鮮による前回の核実験の出力は11─12キロトンだった。

韓国ソウル大学のKune Y. Suh教授(原子工学)は、「これまでの実験に比べて10倍、20倍の大きさ。その規模であれば水爆と言える」と分析する。

日本は放射能物質の収集のため、集塵装置を積んだ航空自衛隊のT4戦闘機3機を離陸させた。中国も北朝鮮との国境で放射能の観測を開始した。

核ミサイルの完成時期

北朝鮮は昨年来、合計30発以上の弾道ミサイルを発射している。今年7月には米国本土に届くICBM級のミサイルを2発、8月には日本上空を通過する中距離ミサイルを1発発射した。

拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司教授は「北朝鮮は米国との対話の前に、手持ちのカードを有利にしたいと考え、なるべく早く核実験をやりたかったのだろう」と分析。「米国に届く核ミサイルが完成するのは、来年春ごろではないか。それ以降は抑止力が効かなくなる」と話す。

米国のマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は谷内正太郎国家安全保障局長と3日午後に電話で協議し、「米国の日本に対する拡大抑止を含めた安全保障上のコミットメントは揺るぎない」と改めて伝えた。

朝鮮中央通信は3日朝、北朝鮮の金労働党委員長が、核兵器の研究所を訪問したと報道。ICBMに搭載する水爆を視察し、「部品はすべて国産だ。これで強力な核兵器を好きなだけ作ることができる」と述べたと伝えていた。

(久保信博、山口貴也、梅川崇、ジャック・キム、スーリン・ウォン、デービッド・ブランストロム 編集:田巻一彦)

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