「栄養」について知らない「栄養士」が多すぎる 残念な栄養士が信じ続ける「7つの誤解」

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つまり、「脳はブドウ糖しか使えない」という栄養士のほうが間違いを犯しているわけです。

栄養士の常識の間違いとして、最も問題なのはこれです。

糖質制限食普及の障害に

この誤った常識がまだ生き残っているため、糖質制限食の普及にとって障害となっています。なぜなら、脳はブドウ糖しか使えないと信じ込んでいる栄養士は、こう考えてしまうからです。

「脳のために、必ず、糖質はある程度食べなければならない」

現在は、糖質制限食が当たり前の選択肢になっている時代ですから、栄養士も頭から糖質制限食に反対はしないようです。その代わり、こんなことを言うようになりました。

「あまり糖質を制限しすぎると、頭がぼうっとしますよ。脳はブドウ糖しか使えませんからね。最低限の糖質は食事でとらないと、脳のエネルギーがなくなります」

そして、「糖質制限はほどほどにしましょう」という結論を出して、こんな指導をするのです。

「ご飯やパンを少しは食べましょう。脳のエネルギーのためにね」

この主張も、もちろん間違いです。「脳はブドウ糖しか使えない」という主張がすでに間違っているのですから、まったく論理的ではありません。

糖質制限ダイエットの恐ろしい『落とし穴』」(2017年4月24日配信)の回にお話ししたように、誤った糖質制限のやり方をして、頭がぼうっとすることはあります。しかし、その原因は「糖質不足」ではなく「カロリー不足」です。

改善する方法は、誤った常識を持った栄養士の言うように、「主食などで糖質を少しはとること」ではありません。

正しい改善方法は、「糖質の少ないおかずをたくさん食べて、タンパク質や脂質を増やし、カロリーを補うこと」です。

【栄養士の誤解2】脂肪は悪玉であり避けるべきである

健康常識の変化として、たいへん重要なものがあります。それは、「脂肪悪玉説は間違いだった」ということです。

これもまた、近年、急速に明らかとなった科学的な事実なのです。

脂質とはいわゆる「あぶら」のことですが、これまでの健康習慣では、どうしても食事の脂質は悪者にされがちでした。

「あぶらをたくさん食べると、体のあぶらも増えるんじゃないか」と思われやすいわけです。

しかし、近年になって科学的な研究が進められた結果、食事の脂質を生活習慣病に結び付けるのは誤りだったと証明されています。

まず、2008年に『JAMA』という非常に権威のある医学専門誌に載った論文があります。アメリカで5万人の女性を対象にし、半分を通常の食事、半分を脂肪の少ない食事にして8年間の経過を追った研究です。

結果、脂肪を少なくした食事でも通常の食事に比べて、心血管疾患になった人の数は変わらなかったのです。ほかに大腸がんや乳がんも減りませんでした。

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