「箱根の龍宮殿」が日帰り温泉に変わった理由 目玉は、浴場からの箱根屈指の絶景

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「龍宮殿本館は、2012年より営業を休止していた。これは、築80年近くが経過し、耐震工事や補修が必要になったこともあるが、当館のお客様は年配の方が多いため、旅館として再稼働するには、エレベーターの設置など、バリアフリー対策も必要となるが、すぐの対応が難しい。

そこで、この価値ある建築を、なんとか別の営業形態で有効に活用できないかとの思いがスタッフの間にあり、新しく着任した総支配人が、スタッフの意見を取り入れ、声の多かった日帰り温泉にすることになった。

なお、龍宮殿本館の浴場は、旅館として営業している龍宮殿別館のお客様にもご利用いただけるが、別館には今まで露天風呂がなかったので、別館のバリューアップにもなった」

――国の有形文化財登録の狙いについて教えてほしい。

「プリンスホテル全体として、保有資産の価値を高めようという動きがある。龍宮殿本館と同時期に、伊豆長岡温泉の三養荘本館も、国の有形文化財への答申・登録を行った」

日帰り温泉オープンの箱根観光への影響は?

プリンスホテルの箱根芦ノ湖地区事業戦略リーダー、稲葉健二氏(筆者撮影)

――日帰り温泉をオープンしたことで、箱根エリアにおいて、西武グループとしてどのような経済効果が見込まれるか。

「箱根は入込観光客数のうち、宿泊者はおよそ2割。残り8割の日帰りのお客様をどう取り込むかも、大きな課題だ。しかし、日帰りの場合、どうしても交通アクセスのいい湯本、宮ノ下、強羅が中心になる。コアなお客様はケーブルカー・ロープウェーで桃源台まで来てくださるが、そのまま、遊覧船で元箱根港まで移動されるので、龍宮殿のある箱根園周辺は素通りというパターンが多い。

日帰り温泉施設をつくることで、この場に足を止めてもらい、お客様の回遊の流れを変えたいという狙いが大きい。ここまで来ていただければ、周辺には箱根園水族館やミニ動物園、駒ヶ岳ロープウェー、遊覧船乗り場などもあるほか、ザ・プリンス 箱根芦ノ湖ホテルのレストランもご利用いただける」

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