区道はわずか3%、東京「無電柱化」構想の虚実 独自取材で判明した、23区の無電柱化格差

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そのため住民側の反応もいま一つだ。板橋区では、2010年ごろに商店街の無電柱化を検討したものの断念した。「営業中の店の前で工事を行うのは厳しい」(板橋区役所に程近い遊座大山商店街)ためだ。

文京区は現在、歩道の拡幅に伴う無電柱化を1路線で計画中だが、「(時間がかかる)無電柱化はいいから歩道拡幅を早くしてくれ、という意見が住民から出るのは確実」(同区道路課)と懸念する。

中央区ですら、1年間で無電柱化される道路はわずか数百メートル。「仮に今のペースで進んだら、(完全無電柱化に)200年はかかるだろう」(中央区道路課)という。

肝心の都は、住民折衝について、「あくまで区の事業であり、都が説明に出向くわけにはいかない」(都建設局道路管理部)と、距離を置く。

業者側も冷ややか?

国土交通省によれば、無電柱化の費用は1キロメートル当たり5.3億円。仮に残りの全区道を無電柱化するとしたら、ざっと5.4兆円もの費用が必要になる。

ただ、こうした潜在需要があるとの見方に工事業者の多くは冷ややかだ。「周辺住民への対応が煩雑で、新規参入業者は多くない」(無電柱化の施工を得意とするジオリゾームの井上利一代表)。

通信工事大手のミライトも「案件こそ多いが、(工期が長く)工事の粗利はよくない」と打ち明ける。

都知事が進める無電柱化政策は、都道が主体になっている。防災やバリアフリーという本来の趣旨に照らせば、区道も議論の俎上に載せる必要があるのではないか。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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