区道はわずか3%、東京「無電柱化」構想の虚実 独自取材で判明した、23区の無電柱化格差

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最も進んでいる中央区で約55.4キロメートル(無電柱化率35%)、進んでいない板橋区で約2.2キロメートル(同0.3%)。その値は“無電柱化格差”ともいえる状況を呈している。

もともと、無電柱化は東京電力ホールディングスやNTT東日本などの電線管理者が独自に行っており、電力・通信需要の強い銀座や日本橋など、一部地域に限って進められてきた。

民間主体での無電柱化は費用対効果の見合った地域でしか行われない。そこで1986年の「第1期電線類地中化計画」を皮切りに、計画や施工が行政主体で行われるようになっている。

再開発で一気に無電柱化が進む

左の区道は電柱のまま、右側の都道は無電柱化が終わっている(記者撮影)

政策的な背景もあり、中央区や港区などの都心区は1990年代から専従職員を配置し、「つねに4~5路線で無電柱化計画が動いている」(港区土木課地中化推進係の徳永康宏係長)状況だ。

こうした区域では再開発も追い風になっている。

たとえばUR都市機構が手掛けた「晴海三丁目西地区」(中央区)では、無電柱化に関連する調整から工事完了まで、一般的な工期の半分である3年半で済んだ。

再開発に伴い権利関係が清算されるため折衝が容易で、工事費用や各方面との調整もデベロッパーが肩代わりする。そのため、都内の再開発区域のほとんどで無電柱化がなされている。

一方で、住宅が集中する区域の状況は厳しい。文京区の場合、無電柱化に人手を割く余裕がなく、道路課の職員が兼務でこなしている。無電柱化が終わった区間は2.9キロメートル。

このうち、区主導で行ったのはわずか約750メートルで、それも「歩道の拡幅工事が先にあり、付随して無電柱化も行った」(文京区道路課)。

もう一つの問題が工期の長さだ。都によれば400メートルの道路を無電柱化するのに約7年かかる。周辺住民などとの折衝に時間が費やされるほか、着工後も、騒音や振動、通行止めに対して、苦情の噴出することが珍しくない。

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