「専門バカ」になると真実が見えなくなる 井沢元彦と予測する「日本の未来」<前編>

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「デフレ脱却」を声高に訴える安倍首相。だがデフレやインフレは 好況や不況の「結果」で起きることで、実質賃金を下げてまで、インフレにすることが賢明な政策なのか」と中原氏は疑問を投げかける。井沢氏も「専門家の言っていることは、つねに正しいとはかぎらない」と応じる(写真:アフロ)
混迷を深める世界。日本はどうなるのか? まったく解がないように見えるが、実は、その答えは「歴史」の中にある。『逆説の日本史』の人気作家・井沢元彦氏と、経済アナリストの中原圭介氏が、物事の本質や真実を問う「哲学的なアプローチ」から、2回に分けて「日本の進むべき道」を探る。

「生類憐れみの令」は「バカ将軍」が出したアホな法律か?

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中原私は経済を見るとき、経済学の知識はあまり重要視していません。その代わりに3つの視点を大事にしています。

1つ目は、物事の本質とは何かという視点。これは「大局を読む」ということでもありますが、その際に最も必要な学問は「哲学と歴史」だと思います。哲学は古代からある学問ですが、もともとは「真理とは何か」という問い掛けから出発しています。つまりは本質を問うているわけです。経済でも、本質を見ることが極めて重要なんです。

私がこういう着想を得たのは、若いころに読んだ井沢さんの著書がきっかけです。井沢さんが語っておられる歴史は、いわゆる歴史学者の知見とは一線を画しているように思います。言語学や天文学なども駆使しながら、その時代に何が起きたのか、当時の人々が何を考えていたのか、まさに本質を炙り出そうとされている。その姿勢に刺激をもらいつつ、強く共感しています。

井沢:ありがとうございます。でも、そんなに高尚な話でもないんです。僕はちょっとひねくれ者なだけですよ。

「裸の王様」という童話がありますね。王様は明らかに裸なのに、いろいろな常識やそれまでの学問などが邪魔をして、そのことが見えなくなることがある。それが学者や専門家の陥りやすい落とし穴だと思います。

たとえば江戸時代、5代将軍である徳川綱吉の「生類憐みの令」というと、多くの人はアホな法律と思っているかもしれません。歴史学者の中にも、そう思っている人はいます。実は当時の人も、まったく評価していませんでした。綱吉を「バカ将軍」と見なしていたんです。

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