「ギリギリOK」の線引きで議論は好転する 「ありきたり意見」しか出ない会議が変わる

拡大
縮小

あるエネルギー関連企業のA社がスマートハウス事業へ参画する際、博報堂が「ビジョンづくり」のお手伝いをしたときのことです。

スマートハウスとは、IT(情報技術)を使って、家庭内のエネルギー消費を管理しようという、省エネ住宅のことです。エアコン、テレビ、冷蔵庫などの家電機器、照明機器、トイレ、浴室などをネットワークで結び、生活者のニーズに応じたサービスを提供します。

その男性社員は、A社の担当者とワークショップを開き、「A社が将来の事業で携わるギリギリの領域」を考えることにしました。

まず、事前に「クリーニング屋さん」「ホテル」「農園」「カーシェア」「ゲームアプリ」など、「住宅」とは直接関係のないキーワードが書かれたカードを用意します。そして、カードをひとつずつ見ながら、「これは、アリか、ナシか」を全員で話し合っていくのです。

その結果、「A社のスマートハウス事業は、その人にとって家が心の休まる場所になるサービスであれば、ギリギリあり」「ホテルやゲームアプリなど、他人と共有するものはギリギリなし」というA社の関心領域が明らかになったそうです。

このように、想定外の発想が必要なときには、予算や時間という事情を取り払って「ギリギリどこまでできるのか?」を考えることが重要になります。

そして、境界線が明確になった状態で打ち合わせを重ねると、的外れなアイデアが減りつつ、かつ、いつもとは違うアイデアが出やすくなります。参加者が知らず知らずのうちに持っている、発想の「ワク」を取り払うことが、アイデアの境界線をギリギリまで広げるメリットなのです。

アイデアを効率的に拡散させるコツ

もうひとつ、効率的にアイデアを拡散させるコツを紹介したいと思います。

アイデアの出し方ではなく、選び方に関するコツです。これも、例を使って説明したいと思います。

たとえば、「社員の団結力を高める」ことを目的とした社内イベントのアイデアを考えてください、というお題があったとします。それに対して、3人の社員が次のようなアイデアを持ち寄りました。

Aさん:みんなでボーリング大会を行い、盛り上がる
Bさん:家族ぐるみでBBQにいき、親睦を深める
Cさん:オフィスに本棚を置き、ひとり1冊オススメ本を持ち寄る

 

3人のアイデアを聞いた後、「どの案を採用するか?」という思考で話し合ってしまうと、良い拡散は生まれません。一方で、「どのボーリング場が良いか」「どんな本が面白いか」など、アイデアの細かい点ばかり話してしまうと、話が広がりすぎて収拾がつきません。

次ページアイデアの裏側にある「狙い」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT