成城学園

第2世紀へ
次の100年を見据えた成城学園の新たな挑戦

成城学園の歴史は1917(大正6)年、成城小学校が開校したことに始まる。今年はちょうど創立100周年に当たる。1世紀の歴史を積み重ね、成城学園は第2世紀へと突入した。それを機に今、成城学園は幼稚園から大学・大学院までの学園全体で教育改革に取り組み始めている。100年の歴史と伝統を踏まえ、成城学園らしい教育という理念は堅持しつつ、国際教育、理数系教育、情操・教養教育という三つの要素を核に、社会が、そして時代が求める人材を育成するため、総合学園としての強みをフルに発揮しながら新たな挑戦を開始したのである。

守り続けた自由主義的教育

上:幼稚園~大学院まで同じ敷地内にあり様々な年代の学生が交わる
下:正門を入ると目に入る100周年記念オブジェ

意外に知られていないが、1917年に開校した成城小学校は、現在の新宿区牛込にあった。現在地の世田谷区成城に転じたのは、25(大正14)年のことである。ちなみに当時、世田谷区に成城という地名はなかった。成城学園が移転してきたことで、成城という地名が生まれたのである。

創設者の澤柳政太郎は東北帝国大学(現東北大学)の初代総長を務め、京都帝国大学(現京都大学)の総長などを歴任した教育界の重鎮であった。そして、子供が本来持つ豊かな天分を伸ばすための教育を提起し、自学自習や少人数教育に力を入れ、試験の成績を生徒の評価に用いないなど先駆的な試みもした。欧米列強に伍して世界の軍事大国にならんとしていた当時の日本にあっては、自由主義的な教育方針を掲げる学校として、教育界では広く知られる存在であった。

ビジョン構築力と実行力

その成城学園の理事長に渡文明氏が就任したのは、2014年のことである。渡氏は日石三菱社長、新日本石油社長・会長や石油連盟会長などを歴任し、石油業界の再編でも大きな役割を果たしてきた経済界の重鎮である。

これからの時代に必要とされるのは、諦めずにやり抜く力を持った改革者です。
渡 文明 理事長
1955年成城学園高等学校卒業、60年慶応義塾大学経済学部卒業後、日本石油(のちの新日本石油)入社。取締役販売部長、常務、副社長を経て新日本石油社長、会長に就任。JXホールディングスに統合後は相談役となる。石油連盟会長、経団連副会長、同審議会議長なども歴任。2014年成城学園理事長

今年度、成城大学では企業トップによる特別講座が開かれたが、これは実業界で築き上げてきた渡氏の人脈があったからこそ実現したもの。連続11回の特別講義の講師陣には、キヤノンの代表取締役会長CEOの御手洗富士夫氏、オリックスのシニアチェアマンの宮内義彦氏をはじめ、トヨタ自動車代表取締役会長の内山田竹志氏など、錚々たる顔ぶれがそろった。そうした渡氏は当然のことながら、産業界・社会がどのような人材を必要とするかについても熟知している。

「昨年、日本で生まれた新生児は100万人を切りました。人口減少が続き、2100年には5千万人ほどになると予測されています。そうなったらもう国を維持できないでしょう。そういう難しい状況だからこそ、社会は改革者を必要としています。これから社会に貢献できるのは、逆境にあり、課題が山積していても果敢に挑戦し、現状を打破して新しいものをつくりあげていく力を持った人材です」

渡氏はそう言って、求められる人材像を明確に示した。そしてさらにこう続けた。

「創立から2世紀目に入り、成城学園は今、教育改革に取り組んでいます。それは、世の中をこう変えたいというビジョン構築力と実行力を持つ人材を育てるためです」

現在、成城学園が進める教育改革には、国際教育、理数系教育、情操・教養教育という三つの柱がある。幼稚園から大学・大学院までの学園が一体となってこの改革を推進しているのである。

「人口減少時代に入っても大学の数は減っていません。したがって学校間の競争はこれからますます激化していくでしょう。その結果、高いレベルで社会が求める人材を高いレベルで育成できない学校は淘汰されていくに違いありません。もちろん成城学園も埓外ではありません」

学園の教育改革の陣頭指揮に立つ渡氏は、そのような危機感の下学園を挙げての改革に取り組んでいる。

語学教育を一層拡充

では、国際教育、理数系教育、情操・教養教育という三つを核にした教育改革とはどのようなものだろうか。

学園全体で伝統的に力をいれている情操・教養教育の一環

「人口減少時代には、海外に市場やビジネスチャンスを求めて積極的にグローバル化していく必要があります。そしてその中で一人ひとりが力をつけていかなければいけません。国際教育はそのためのものです」

そう語るのは、成城学園の油井雄二学園長だ。成城学園では幼稚園から高校まで、学年ごとの学習到達目標(CAN―DOリスト)を定めた英語教育を行っている。加えて今年度からは中学と高校の1年生全員にタブレット端末を配り、自宅で英語のオーラル学習ができる体制を整えた。

「これは高校3年生まで徐々に広げていきます。タブレットには米国製の英語学習アプリが入っており、習熟度も毎週チェックできます。小学5年生と6年生は今年度から英語学習のテキストをオックスフォード出版局(OUP)のものに切り替えましたが、来年度からは小中高の全学年でOUPのテキストにします」

ワンキャンパスのシナジー

一方、論理的思考力を養うため理数系教育にも力を入れている。成城大学では日本アイビーエム東京基礎研究所と連携協定を結び、その協力を得てデータサイエンスの講座を開設している。アイビーエムからは博士号を持ったエンジニアが派遣され、高度で実践的な講義が行われているという。ただ、油井氏は「これはIT機器を使えるようにするのが目的ではない」と強調する。

先行きの見えない転換期だからこそ、気概を持った若者を育てたい。
油井 雄二 学園長
1972年一橋大学経済学部卒業、74年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了後、78年富山大学経済学部助手、専任講師を経て81年助教授へ。82年より成城大学経済学部助教授。経済学部長、成城大学学長などを経て、現在成城学園評議員、成城学園常務理事、成城学園学園長を務める

「論理的思考力をベースに、新たなものを企画する力、発想力、柔軟な思考力を養うのが最大の目的です」

三つ目の情操・教養教育に関しては、成城学園が伝統的に注力しているところでもある。幼稚園、初等学校(小学校)、中学・高校、そして大学・大学院を擁する総合学園であり、しかも幼稚園から大学までがすべて世田谷区成城の同じキャンパス内にあることが大きく寄与していると油井氏は指摘する。

「同じキャンパスに幼稚園児も大学生もいるので、年長者には弱い者への思いやりの気持ちが自然に涵養されますし、多様な世代の人間が混在することで子供たちも社会性を身につけることができます。情操は座学だけでなかなか身につけられるものではなく、一人ひとりの個性を尊重した澤柳先生の時代から100年続くまさに伝統の力が大きいといえるでしょう」

成城国際教育プログラム

こうした成城学園の教育改革は、成城大学でも貫徹されている。とくに注目したいのが、いずれも今年度から始まった成城国際教育プログラム(SIEP)とピアチューター制度だ。

海外インターンシップを始め国際教育に力を入れている

SIEPは留学や海外インターンシップへの参加を目指す国際教育で、留学試験対策の充実や海外短期語学研修の拡充、海外インターンシップ受け入れ企業の拡大、半期留学の導入など多様な取り組みが展開の途上にある。成城大学の戸部順一学長は、SIEPの意義と目的をこう説明する。

「世界のどこへでも出ていって活躍できる世界市民=コスモポリタン的な人材を育て、社会に送り出すのが成城大学の国際教育の目指すところです。SIEPでは必要とされる単位を修得した学生に対し認定証を出し、このプログラムの成績優秀者は大学が学費を負担して海外に2カ月留学できるように計画しています」

気概を持った若者を世に送り出す

もう一つのピアチューター制度は、研修を受けた学生が他の学生の学習を支援するというもの。予習・復習の仕方、ノートの取り方、レポートの書き方、パソコンの使い方など支援するのはごく基本的なことだが、支援を受ける学生だけでなく支援する側の学生にとっても学ぶことが多く成長の効果が期待できるという。

社会に出たときに自分の居場所を見つけられるための技術や知識を伝授するのが教育です。
戸部 順一 成城大学・学長
1975年東京大学文学部卒業、78年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、94年成城大学文芸学部助教授を経て同教授に。2004年成城大学文芸学部長、12年成城大学文芸学部長、16年より成城大学学長

「ピアチューター制度は情操教育の一環でもあります。仲間同士で学びあい教えあうことがキャンパス全体の風土になってほしいし、チューターとなる学生はリーダーとしての資質も磨くことができ、その経験は社会に出てからも必ず役に立つはずです」と語る戸部学長によれば、成城大学を卒業した学生が身につけてほしいスキルや資質を示す成城コンピテンシーをつくることも現在計画中だという。どの講義でどういうスキルが身についたか、どういうことを学びたかったかなどについて卒業生たちにアンケート調査をすでに始めている。コンピテンシーができれば、学生は学習の目標設定がしやすくなるなどの効果が期待されている。

「本学では、世界市民たる独立独行の人材を育てることを重視しています。自ら考え、判断し、自分の考えを自分の言葉で語ることができ、同時に自分とは異なる考え方にも真摯に耳を傾け、ときには自分の考えを修正する寛容さも持つ。そういう資質を身につけて世界に飛び出していく気概を持った若者を送り出すのが、本学の使命です」

創設から100年。この間、澤柳が残してきた真善美の理想を追求する建学の精神は連綿と受け継がれてきた。都会的で明るくセンスがいいという成城カラーも健在だ。100年間に学び、次の100年間を視野にとらえた壮大な挑戦は、もう始まっている。

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学校法人 成城学園
 http://www.seijogakuen.ed.jp/