平壌の「MINISO」が突如ブランドを変えていた オリジナル商品の販売はなおも継続中

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この点について、馬氏は「あくまで推測」としたうえで、「中国の名創優品が取引を停止する前に販売した商品の在庫処分なのではないか」と述べた。

日本の取締当局はどう見ているのか。経済産業省貿易管理課は「日本は北朝鮮との輸出入の全面禁止の措置を施している。日本の本社から中国に指示し、北朝鮮に物品の輸出を行っているのであれば、仲介貿易に当たり、これは禁止されている」と指摘する。

しかし、今回のMINISOのように、日本本社の指示がないまま、中国で製造した物を北朝鮮に輸出するという業態は、日本の外為法違反(仲介貿易取引の禁止)の射程外になっている。

南誠一氏とは何者か

同社ホームページの中国語サイトでは、このMINISOの平壌店にかかわる契約を調印した今年1月18日の式典の模様を紹介している。MINISO側からは三宅氏と「グローバル共同創始者」の葉国富氏、北朝鮮側からは「朝鮮経済合作委員会の中国丹東事務所首席代表」の南誠一氏がそれぞれ出席している。日本の複数の捜査当局者は筆者の取材に対し、この南氏が朝鮮総連に関係する商工人とみていることを明らかにした。

MINISOブランドの変更によって、平壌店の経営がどのように変わったのか。あるいは今後の製品の仕入れをどうするのかといった点は明らかになっていない。

北朝鮮の若者に起業家としての活動を教える民間団体、朝鮮エクスチェンジのシニアアドバイザー、アンドレイ・アブラハミアン氏は、今回のブランド名の変更によって、制裁を受けている北朝鮮経済が、いかに上手に商売を秘密裏に行っているかを如実に示していると指摘する。

アブラハミアン氏は「名称の変更にかかわらず、すべての製品は同じままだと推測する。しかし、それによって、より世間の目から隠されることになる」と指摘した。

前述の平壌の関係筋の一人によると、7月27日の店舗の改修後、店内での写真撮影や日本人の入店が禁止されたという。一連の報道を通じ、北朝鮮側が警戒を強めていることは間違いないようだ。今後の平壌店の動向に引き続き、目を光らせていきたい。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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