私たちは「大人の脳」の使い方を知らなすぎる 10代半ば頃からは勉強法を変えるべき

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答えは簡単です。「大人と子どもでは、脳の機能が違う」からです。私たちの体が成長するように、脳も年齢に従って変化をしていきます。ですから、7歳の自分と35歳の自分の脳では、ずいぶんと内容が違っているのです。それは、判断力、思考力といったことにとどまらず、勉強方法や暗記方法にまで及びます。

ところが、多くの方は学生時代に身に付けたのと同じ勉強の仕方で、目の前の学習に対処しようとしてしまいます。これは言ってみれば、子ども用のラケットで錦織圭のスマッシュを受けようとしているようなもの。太刀打ちできないのも無理はありません。

大人には、大人用の勉強法がある

では、大人の勉強法とは、具体的にどのようなものなのでしょうか? もちろんその理由は脳科学の見地からご説明いたします。

Q. 予習 or 復習。脳に定着しやすいのはどっち?

答えは「予習」です。

脳には「ファミリアリティ」という性質があります。これは簡単にいえば「知っているもの=好きなもの」 と認識する性質です。予習をしておくと、脳は「それを知っている」と判断し、「好き嫌い」を感じる脳の部位「扁桃体」に「好き」という感情が湧き起こります。

「扁桃体」は、記憶をつかさどる「海馬」と近く、両者は連動して活動しています(fMRI による)。 そのため、脳にとっては「知っているもの=好きなもの=覚えやすい」となるのです。そのため予習をしっかりすると、授業本番の学習効果が上がるだけでなく、脳にも定着しやすくなるのです。

なお、予習時間は5分程度でも効果は期待できます。忙しい大人には、予習・復習をたっぷりする時間はありませんが、最低でも5分の予習時間を持つことで、勉強効率がぐっと上がるのは間違いありません。

Q.英単語の暗記。「起きてすぐ」or「寝る直前」どっちがいい?

正解は「寝る直前」です。

暗記した内容は、睡眠時間の間に記憶として定着します。脳は寝ている間に、その日のうちに得た情報を整理し、大切な情報を長期記憶に移動するのです。この記憶のメカニズムは大人に限った話ではありませんが、機械的記憶の能力が下がってきている大人は、特に意識したいポイントです。

しかし、ただ寝る前に暗記すればいい、というわけではありません。大切なのは、「学習後は→何もせず、すぐに寝る」ということ! 暗記と睡眠の間に、少しでも違うことをしてしまうと、「記憶の攪乱」が起きてしまいます。これは、たとえば暗記した英単語と、寝る前に見たスマホの画面の内容が、脳の中で混ざり合う現象です。これが記憶の効率を低下させるのです。

「寝る直前の暗記もの」が、脳には効果的ですが、暗記した後はなにもせずに布団に直行してください。ちなみに、暗記時間は長くとる必要はありません。10分もあれば十分です。

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