中国が米朝に仕掛けた「二重凍結」というワナ この国の意図は、危機解決ではない

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2つ目の欠陥は、協定が守られているかどうか検証が困難なことだ。米韓が合同演習を行っていればすぐにわかる。だが、北朝鮮が水面下で核開発を行っていないことを確かめるのは極めて難しい。

さらに問題なのは、金政権を利する可能性があることだ。凍結期間は、北朝鮮の技術者が核弾頭小型化の技術を習得するための時間稼ぎに利用されかねない。

危機解決の責任をトランプ政権に押しつけた

北朝鮮には、1994年に米朝枠組み合意で核開発凍結を受け入れながら、正恩氏の父、金正日氏がこれを即座に裏切り、秘密裏に核開発を進めた過去がある。米国が同じ手に乗るはずがない。

中国が二重凍結を持ち出したのは、危機解決のためではない。北朝鮮に対して中国が持っている影響力から国際社会の目をそらし、トランプ政権の常軌を逸した外交アプローチへと関心が向かうように仕向けたのだ。米国に決断を迫ることで、危機解決の全責任をトランプ氏に押しつけたのである。

ミンシン・ペイ 米クレアモント・マッケン大学教授

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Minxin Pei

専門は中国情勢、比較政治、米アジア関係。ハーバード大学で博士号取得。著書に『China's Crony Capitalism』(中国のクローニー資本主義/翻訳なし)。

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