ユーロ圏が機能するには「財政統合」が必須だ マクロン大統領ならできるかもしれない

✎ 1〜 ✎ 373 ✎ 374 ✎ 375 ✎ 最新
拡大
縮小

求められているのは、ユーロ圏諸国における新たな中央評議会である。フランス、ドイツ両国の財務相、ECBのマリオ・ドラギ総裁、ヴィトル・コンスタンシオ副総裁、ジャン=クロード・ユンケル委員長を含む欧州委員会の代表者から成る組織だ。これによって、経済刺激策、構造改革プログラム、今後の利上げをめぐるユーロ圏諸国、ECB、欧州委員会の間の調整は大幅に改善するだろう。

究極的には、中央評議会は欧州共通の財務省の設立および財政統合の土台となる可能性をも秘めている。

欧州にはハミルトンのような人物が必要だ

ジャン=クロード・トリシェECB前総裁が長らく主張してきたように、ユーロ圏は財政統合なくしては機能しえない。だが、欧州が大きく駒を進めるには、米国の初代財務長官を務めたアレクサンダー・ハミルトンのような人物が必要だ。

財政統合は、単に債務の負担を分け合うだけの仕組みにとどまるものではない。米国がハミルトンの改革によって州政府から連邦政府へと権力をシフトさせたように、ユーロ圏諸国も国家主権を一定程度は明け渡す必要があるだろう。

つまるところ、ユーロ圏の構造問題を解決するには、財政統合以外に実行可能な解決策はないのだ。安定・成長協定は次善の策にすぎず、それでは欧州は危機を抜け出すことはできないだろう。

歴史を見れば明らかだが、統一通貨・ユーロを実現するためには、欧州の政策決定者はまず、欧州通貨制度を通じて各国の政策を調整する必要があった。ユーロ圏における新たな中央評議会は、財政統合という今日の課題に向けて、同様の成果をもたらす仕組みとなりうる。

では欧州にとってのハミルトンとなるのは誰だろうか。目下、欧州で最も際立ったリーダーが、財政統合とユーロ圏共通の財務相ポストの創設を主張し、一身に注目を浴びている、フランスのエマニュエル・マクロン大統領である。

シルベスター・アイフィンガー ティルブルフ大学(オランダ)教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

シルベスター・アイフィンガー / Sylvester Eijffinger

オランダのティルブルフ大学教授(金融経済学)

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT