「人は誘惑に弱い」と知るイスラム教の不倫観 リビドーはコントロールできるのか

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イスラム教の中にその答えが隠されているかもしれません(写真 : Kzenon / PIXTA)

近年、日本では政治家から芸能人に至るまで、不倫問題が飽きることなく伝えられています。一流大学を卒業した歯科医や絶頂期にある芸能人――支払わされる代償は果てしなく大きいのに、なぜ人々はこうした過ちを繰り返してしまうのでしょうか。

日本から遠く離れたアラビア半島の荒野で誕生したイスラム教の中に、その答えが隠されているのかもしれません。というのも、イスラム教とは人間の欲望、特にリビドーをどうコントロールするかという側面を持った宗教でもあるからです。イスラム教には、そもそも人間の浅はかな知恵で、全知全能の神が与えた教えの意味を推し量るのは無意味との考え方もあります。それを承知のうえで、報道が相次ぐ日本の不倫問題について、イスラム教の視点から考えてみたいと思います。

イスラム教では性欲は肯定されている

不倫については評論家から精神科医に到るまで多様な解説が飛び交っています。性欲や自己欠如感、支配欲を満たしたり、背徳感を味わったりという動機のほか、禁止されているものほどやってみたくなる心理的な現象「カリギュラ効果」を持ち出してきて説明する向きもあります。子孫を多数残そうとする男性(オス)の生物学的な特性を根拠にした解説もなんとなく説得力があります。

いろいろな説から理解できますように、ジークムント・フロイトが言うところの性的欲望や性衝動に関係する根源的な人間のエネルギーに起因した問題のようでもあります。 でも、現在の婚姻システムを前提にする限り、男女とも社会的信用の喪失や慰謝料請求、家庭崩壊など不倫の代償は小さくありません。翻って、イスラム教は不倫をどう考えているのでしょうか。

イスラムとは、すべてを神に委ねて、その教えに従うものです。イスラムの根幹を成すコーラン(聖典)やハディース(預言者ムハンマドの言行録)を読むと、その内容は「人間の取り扱い説明書」という側面があることがわかります。イスラムでは性欲は肯定され、結婚という管理された下での積極的な性生活が奨励されています。コーランには、結婚後の夜の営みについて、次のような記述があります。

「女というものは汝らの耕作地。だから、どうでも好きなように自分の畑に手をつけるがよい」((2章223節)『コーラン(上)』井筒俊彦訳 岩波文庫)。

イスラム圏には女性の下着専門店が結構あり、原色の妖艶な下着が並べられているのを目にします。子孫繁栄を推奨するコーランの教えも加わり、イスラム圏には子沢山という家庭が多いのは有名な話。セックスレス、少子化が深刻化する日本とは違い、イスラム圏の夜の生活は意外に充実しているようです。

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