景気底打ち?中国の経済運営は変わったのか 景気・経済観測(中国)

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それが主目的ならば、単純に利下げをすれば事足りるはずだ。中国政府の狙いは、利下げにより非効率な投資が増えるような状態を作り出すことにはなく、銀行間競争を促すことで、競争力・成長性に富む企業であれば低利融資を受けられるようにし、経済全体の効率性を改善させることにあるとみられる。

また、そもそも銀行は貸出金利を引き下げにくい環境に置かれている。6月の金融混乱以降、インターバンク金利(SHIBOR)、国債利回りの水準がそれ以前と比べて上がっているからだ(左図)。貸出金利の自由化が景気に与える影響は限定的だろう。

では、財政政策についてはどうだろうか。

8月1日から、月間売上高2万元以下の零細企業を対象に、「増値税」(主に物品販売に賦課される付加価値税)と「営業税」(特定サービスの提供、無形資産の譲渡、不動産販売を行った企業・個人に課される税金)の暫定免除措置が適用され始めた。ただし、その減税規模は小さい。

たとえば増値税の場合、減税規模は最大限に見積もったとしても年間432億元(対2012年名目GDP比で0.08%)程度にとどまる。課税対象がより狭い営業税の減税規模はこれよりも小さいと考えられる。景気減速の影響を受けやすい中小企業への支援という性格が強く、景気を力強く上向かせることに力点があるわけではない。

地方政府債務の拡大に対する警戒感

7月15日に財政部は地方政府に対して財政資金の使用効率の改善を要求している。具体的には、2013年度の財政予算の執行を速めたり、使う必要性や可能性がなくなった特定財源の剰余金をほかの支出に回したりすることで、2013年末の財政剰余金を前年末に比べて大幅に削減することを財政部は求めている。財政剰余金の規模は不明だが、2011年末時点で2兆元程度と伝えられている(対2012年名目GDP対比で約4%)。

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