「原油価格はもう一度下落する」は本当なのか 「1バレル=40ドル台後半」は、いつまで続く?

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こうした減産問題を解決するためもあって、8月7・8日にはアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国で、OPECと非加盟国による専門家会合が開催、「協調減産合意は徹底される」との声明を発表した。

会合にはロシア、クウェート、サウジアラビア、OPECの本部ウィーンから当局者が出席。そのうえで、イラク、UAE、カザフスタン、マレーシアの各関係者と個別に会談したという。

OPECが供給監視で利用する二次情報統計によれば、OPEC加盟国のイラクとUAEの順守率が比較的に低い。さらに、非加盟国のカザフスタンとマレーシアでは、ここ数カ月間、増産が続く。OPECは声明で、「UAE、イラク、カザフスタン、マレーシアが、現行の減産監視制度を全面的に支持することを表明した」としている。今回の会合を通じて、OPEC加盟・非加盟国が原油相場の引き上げを真剣に考えていることが市場に多少なりとも伝われば、少なくとも下落し続ける事態にはならないだろう。

米国のガソリン需要は過去最高

一方、原油価格が抑制されているもう一つの要因である米国の産油量の状況にも注意が必要だ。米国内の7月の産油量は日量943万バレルと、2015年8月以来の高水準に達し、昨年6月と比べても12%増加している。

しかし、ここにきて、徐々に増加ペースが鈍化している。ここ数カ月の原油安への対応で投資削減が計画される中、15カ月間に及んできた回復基調は鈍化しているといえる。「安い原油価格の水準でも操業ができる石油企業の数が増えている」との指摘もあるが、この状況が長続きするかは大いに疑問が残る。

原油価格が安いうちは、コストの安い鉱区での産出を行うだろうが、それは将来のコストアップを意味する。そうなると、原油生産・供給の頭打ちがいずれ確認されるだろう。むしろ注目したいのは、米国内のガソリン需要動向だ。

7月のガソリン需要は過去最高を記録した。また、製油所の原油処理量も増加、日量1760万バレルと、調査開始の1982年以来で最高となっている。米国での原油需要の増加は、原油相場の押し上げに確実に効いてくるだろう。

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