トランプ大統領から大企業が「逃げる」理由 ビジネス関連助言組織が相次ぎ解散

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無料でサイトやブログを開設できるソフトを提供するワードプレスも、バージニア暴動にかかわったネオナチグループであるヴァンガードアメリカのウェブサイトを削除。同グループのメンバーは、白人至上主義に反対するデモの参加者を車で襲い、若い女性を死なせた疑いで訴えられているが、資金調達サイトのGoFundMeは、被告人の法廷用資金調達を同サイト上で得られないようにした。また、民泊サイトのエア・ビー・アンド・ビーも、白人至上主義者集会への参加者に物件を貸すことをやめた。

ここへきても、事態が収束する気配はない。

19日には、文化面の助言を行う芸術評議会の委員が一斉に辞任。バラク・オバマ政権時から委員を務めていたインド系俳優のカル・ペン氏は、自身のツイッターに「あなたの憎しみに満ちたレトリックは、われわれもあなたの言動に加担していると(人々に)思わせてしまう」とつづった。

娘のイヴァンカ氏でさえも・・・

さらに、伝えられるところによると、トランプ大統領の娘であるイヴァンカ・トランプ氏と、その夫のジャレット・クシュナー氏も、自宅そばで記者団に自らの父親の行動を「ぞっとする」と話したという。自身のファッションブランドに、「トランプ」の名を冠しているイヴァンカ氏は、そのブランドネームが修復可能なほどのダメージを受けることを心底気にしているのである。

トランプ大統領は、確かにビジネスで成功したかもしれないが、『フォーチュン500』に入るような多国籍企業を経営したことはない。同大統領が経営していたのはいずれも、彼に意見をできるような社外取締役や株主がいない「パパママショップ」で、彼のような経営者がホワイトハウスの民間パネルに名を連ねるゼネラル・モーターズ(GM)やIBMといった多国籍企業のCEOと同じ目線で語ることは最初から難しかったのかもしれない。

いまや企業や企業の経営者にとって、トランプ大統領にかかわることは、自社ブランドや自身の評判を傷つけかねない危険な行為になってしまっている。ビジネスマンであることを最大のウリにしてきたトランプ大統領にとってはなんとも皮肉な展開である。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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