川上量生「中国のネット管理政策は正しい」 機械が人間を支配する時代は来るのか

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――「GAFA」の中で、5年後、より強くなっている企業はどこだと思いますか。

うーん……、すごく難しい質問。どこも一長一短で、ちょっとわからない。もしわかるという人がいるなら、それが間違っていると思う。4社ともそれぞれに特徴はあるけど、世の中は複雑系で動いていて、予測不可能。すると一般論としては、いちばん重要なのは運、ということになってしまう。4社の将来についても基本はそうとしか言いようがない。

経営者の能力は勝敗を分ける一要素になる

――事業内容から区別すると、アップルだけがハードウエアに偏っていますよね。

アップルの今のポジションは強力だし、アップルが勝つシナリオもありうる。ただ、4つの中では唯一、すでに創業者が世を去っている会社。そもそも彼らが戦っているのは非常に高いステージの上で、そこに上がれるかどうかは運が大きい。でも、そのステージ上のゲームにおいては、経営者の能力は勝敗を分ける一要素になる。

他方のフェイスブックは、4社の中でいちばん弱いビジネスというか、滅びてもおかしくない会社と思っていた。もともとSNSは長期的にやるのが難しい。しかもコミュニケーション疲れを起こさないという意味では、ツイッターのほうがサービス設計で優れていた。だが現実には、フェイスブックはM&Aも駆使しながら、今もすごくうまくやっている。これはやはり、経営トップの才覚なんじゃないの。

グーグルは偶然の産物というか……、彼らはある種、理想家たちの会社で、それがたまたま成功した。そういう意味では、僕は4社の中で、グーグルが勝つ未来を見たい。経済原理に従って生まれてくるビジネスはあまり面白くないが、彼らなら、それを超えたところで何かを成し遂げてくれるような気がする。

この経済原理に照らして、最も正しく、合理的な戦略を持つのがアマゾンだろう。もし歴史がもう一度繰り返しても、アマゾンは必ずまた生まれる。ほかの3社は偶然の重なりがなければ生まれてこないかもしれないけど。それぐらい、アマゾンがやっていることはビジネスのお手本的な正攻法だということ。なんていったってデジタルのウォルマートを作ろうという、非常に明快な目標だから。

『週刊東洋経済』8月21日発売号(8月26日号)の特集は「教養としてのテクノロジー」です。
長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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