米国株の本格的下落が始まったかもしれない 警鐘は「相場の天井」で鳴ってはくれないもの

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ただし、前掲のコラムでも述べたように、風船に水がたまっただけでは破裂せず、外から針が刺さることが必要だ。

VIXやジャンク債の動きについても、一時VIXやジャンク債の利回り差があまりにも低下したことの、単なる反動の部分もある。金価格が上昇していると言っても、今は6月のピーク水準に並んだ程度だ。つまり警戒の鐘は鳴り始めてはいたが、だからといって、すぐに米国株が下落基調入りする、ということまでは断言できない。

「高すぎる株価のツケ」を払うのはいつなのか

いろいろな警戒サインを挙げたが、結局「米国株価が年末に向けて調整する」、もっと大きな要因だと考えているのは、米国景気や企業収益の動向ではなく、米国株が高すぎる、ということが本質だ。

S&P500指数の予想PER(株価収益率、直近四半期を含め、向こう4四半期の合計予想利益に基づく)をみると、リーマンショック前から長らく18倍が上限として働いていたものが、昨年11月の米大統領選挙以降、18倍を大幅に上回る局面が概ね続いている。すなわち、企業収益は増益基調だが、そのペースをはるかに上回る株価上昇が、トランプ政権の経済政策に対する行き過ぎた期待から生じているわけだ。その「ツケ」は、「いつかは」支払わなければいけない状況にある。

では、「いつかは」というのは、結局いつなのか(いつ風船に針が刺さるのか)については、やはり天井でぴったり鐘は鳴らず、「おそらく9月以降だろう」、と予想していた。これも前掲のコラムで書いたが、米議会は夏休みを明けて9月5日火曜日から再開され、予算案の策定にとりかかる。

議会共和党は財政赤字の膨張に対し、極めて警戒的なので、もともとトランプ大統領の案に比べ、減税もインフラ投資も大幅に縮小される可能性が高い。それが過剰な経済政策期待に、とどめを刺すと見込んでいたわけだ。予算案については、議会共和党は別途の財源を求める姿勢であり、それがオバマケアの改廃によるヘルスケア支出の削減や、いわゆる「国境税」(法人税の国境調整)による輸入業者への課税強化であった。ところがこの2つとも断念する事態となり、代替財源が見つからない。このため、法人減税やインフラ投資の額は、ほとんどないようなものになる恐れまで生じている。

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