「ポケモンGO」を生んだ男が語る技術の本質 「ビジネスの現場はソフトが物事を左右する」

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野村達雄(のむら たつお)/米ナイアンティック『ポケモンGO』開発リーダー。1986年生まれ。2011年東京工業大学大学院修了、米グーグルの日本法人に入社。グーグルマップ関連事業を経て2014年に米ナイアンティック・ラボ(現ナイアンティック)へ参画。同社がグーグルから独立した後に現職就任(撮影:尾形文繁)

AI(人工知能)、自動運転、AR(拡張現実)――21世紀は新しいテクノロジー(テック)とそれを使ったビジネスが社会を大きく変える時代だ。ビジネスパーソンも業界を問わず、テックに対する感度が求められる。

週刊東洋経済は8月21日発売号(8月26日号)で『教養としてのテクノロジー』を特集。ビジネスに必須なテックの動向を幅広くレポートしている。東洋経済オンラインでも連動して、特集で取材した“テック賢人”のインタビューを5回にわたって紹介したい。初回は、世界的ヒットとなったARゲーム「ポケモンGO」を開発した、ナイアンティックの野村達雄氏だ。

技術は都市と人が決める 

――ポケモンGOはARの面白さを世界に伝えました。野村さん自身は新しい技術やサービスに対する感度をどう養っていますか。

2013年から米シリコンバレーにいることがすごく影響していますね。新しい情報が自然と入ってきます。スタートアップであったり、サービスであったり、技術であったり、なんでも。この部分は日本と比べると大きな違いですね。

――情報感度は住む場所によって決まる?

全然違います。僕は中国・東北部で生まれ育ったのですが、郷里にいたころは何もしらなかった。交通信号も身近にないので、何かよくわからなかったぐらいです。

週刊東洋経済8月21日発売号(8月28日号)の特集は『教養としてのテクノロジー』です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

それが日本に移住して、コンピュータに魅了されました。大学時代は長野でコンピュータサイエンスを勉強しました。ただ当時は、共通の言語で話せる人が周囲に少なかった。同じ専攻の学生はいますが、コンピュータが本当に大好きで、それを極めている人はかなり少なかったのです。だからインターネットで情報を集めたり、先生に質問したりしていましたが、情報の量はどうしても少なかった。

コンピュータについて本当の意味で目覚めたのは、東京工業大学大学院に進学してからです。松岡聡研究室に所属したのですが、そこで初めてスーパーコンピュータに触れました。もちろん、スパコンというものを知ってはいましたよ。でも、身近にはなかったので、本当のところスパコンがどういうモノなのか、分かっていなかった。研究室には普通にスパコンがあったし、それを夢中になって研究している人がたくさんいた。そういうモノと人に囲まれて、情報量が飛躍的に増えました。

特に僕はそれまでソフトウエアしかやっていなかったので、スパコンに使う半導体の論理回路から学べたことは大きなターニングポイントになりました。コンピュータがなぜ動くのか、ソフトの側からしか理解していなかったのが、ひとつのストーリーとして完成されたという感じ。たとえるなら、絵を描く人が、画材の性質や成分まで理解したことで、もっといい作品を作れるようになったようなものです。

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