本当の北朝鮮リスクは米国が本気を出すこと 米国がトランプ大統領でまだ良かったかも?

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政治的リアリズムから言えば、このタイミングで軍事オプションを行使することは考えにくい。今のように「トランプか、反トランプか」で国論が分裂している状態で、対北朝鮮攻撃などという冒険に打って出ることができるのか。韓国在留米国人の安全も気になるところで、その数は10万人以上と言われている。「サージカルアタックだなんて、そりゃあ無理だ」と考える方が自然であろう。

それでも8月21日から31日までの予定で、米韓合同軍事演習が行われる予定である。空母2隻、原潜、イージス艦、ステルス戦闘機などが投入され、2万8500人が参加するという。この演習が、どこかの時点で実戦に転じるのではないか。秘かに「斬首作戦」を狙っているのではないか……と一番恐れているのは、金正恩委員長その人であろう。

山梨県の別荘で静養中の安倍晋三首相も、予定より早く18日(金)で切り上げたそうだ。7月31日に日米首脳の電話会談が行われた際に、「おたく、夏休みはどうするの?」という会話がなかったとは思えない。ひょっとすると今週末以降、何か動きがあるかもしれませぬぞ。いや、確率的にはきわめて低いと思うんですけどね。

トランプ大統領でまだ良かったかも?!

それでは思考実験として、米国の大統領がトランプさんのような出方の読めない人ではなくて、もっと「まっとうな」人であった場合はどうなっていただろう。

トランプさんは大統領に就任してから、北朝鮮の危険性を学習したようである。その後、半年かけての試行錯誤は、軍事的圧力、経済制裁の検討、中国への関与など、歴代の米政権がやってきたことの繰り返しであった。結論は「迂闊に手は出せない」であり、その思考経路は間違ってはいない。ただしこの間、北朝鮮のミサイル技術は長足の進歩を遂げてしまった。今では北朝鮮のICBMが、「デンバーからシカゴまでに届きかねない」水準に達したという現実は重い。

自国の安全だけを考えるのであれば、米国が米朝2国間交渉に乗り出すことはほとんど論理的な帰結と言える。その上で北朝鮮の核保有を認め、相互不可侵を確認し、代わりに長距離ミサイルの開発を止めさせるという手がある。この場合、日本と韓国はまったく蚊帳の外に置かれるし、引き続き北朝鮮の短距離ミサイルや核兵器の脅威にさらされることになる。日本としては泣いてもすがっても止めたいところだが、「米国ファースト」で考えればその方が合理的な判断となる。

さるウォッチャー曰く。「金正恩委員長は読めない相手だが、これが先代の金正日総書記であれば、とっくの昔に訪米して米朝合意にこぎつけていたかもしれない…」。それはそれで、日本にとっては悪夢のシナリオと言える。

奇襲攻撃は怖いが、米朝交渉も嫌だ。このように考えると、米国の大統領が「まだしもトランプさんで良かった!」という気もしてくる。われながら、倒錯しているだろうか?

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