フランスの試験問題に不正解がない深い理由 問いにはいろいろな答えがあって当然だ

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フランスでは、幼い頃から、世の中において不条理は付きものであり、それが人生だとたたき込まれる(写真:Goodluz / PIXTA)
フランス人の「正解のない問題に対応できる力」はどのように育まれるのか。パリ在住20年の皮膚科専門医で、『人生に消しゴムを使わない生き方』を執筆した岩本麻奈氏に見たフランス流「人の育て方」とは。

失敗には新たな発見がある

――フランス人は「人生に消しゴムを使わない生き方」なのですね。

実際に「消しゴムを使わない」教育をしていく。万年筆を使い、鉛筆は使わない。間違ったことをなかったことにしないためだ。だいたい鉛筆書きではないからきれいに消せないし、修正したとしても試行錯誤の跡がはっきりわかる。そのうえフランスでは答案は美しくないと減点される。万年筆によって美しい書体で書き、その使い込みを通じ美意識がたたき込まれる。ライフスタイルにも大いに関係してくる。

――試験では白紙の答案用紙が配られるとか。

大学入学の国家資格「バカロレア」の試験にしても、基本は白紙の答案用紙に書き込む。日本のテストは択一問題や空欄を埋めるものが多いのに対し、フランスは理系、文系にかかわらず、薄い線があったりもしない。小学校のときから白紙を体験しているから、動じないし、また記述式に強くなっていく。いわばビジネスでのプレゼンテーションと同じで、場数を踏み、失敗してもそれを怖がらない気質を培うことにもなる。失敗には新たな発見があり、むしろそれを面白がっているようにさえ見える。

――すべてにおいて正解は一つではないと。

日本の試験問題はほとんどが正解は一つ。答えがバラエティに富むことはなく、ほかの考え方は認めない。これに対してフランス人はいろいろな考えを尊重し、先生自身もそれ以外は間違っていると言わない。逆に異論を唱えても論理が通っていれば評価する。新たな発想やクリエーティブな動きをたたえる。フランスではむしろバラバラでいい、バラバラが面白いとなるほどだ。

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