トヨタが「WRC再参戦」でつかんだ成果と課題 もう一つのホームグラウンドも気になる

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トミ・マキネン氏は「われわれのマシンは小さい改善点はあるものの、計画的なテストプログラムを積んできた結果、とにかく運転しやすいクルマに仕上がっています。ドライバーにとっても運転しやすい=自信につながりますので。とはいえ、まだまだクルマを速くするアイデアはあります」。

ユホ・ハンニネン/カイ・リンドストローム組のヤリスWRC #10号車(筆者撮影)

また、開発ドライバーをしてきたユホ・ハンニネン選手は、「テストがスタートした時からバランスがよくドライビングもしやすかったので、基本的には小さなステップでよくなってきています。今年は特にサスペンションがいいので、性能はライバルにかなり近づいていると思います」と現時点でのポテンシャルに関しては高い評価である。

軽くて頑丈なクルマにする必要がある

一方、トヨタ側の声はどうだろうか? 市販車のヤリス(日本名:ヴィッツ)はこれまでさまざまな改良で進化してきているが、もともとラリーを前提としたクルマづくりは行われていない。GAZOO Racingカンパニーのエグゼクティブ・アドバイザーである嵯峨宏英氏はこう語る。

GAZOO Racingカンパニー エグゼクティブ・アドバイザーの嵯峨宏英氏(筆者撮影)

「もちろん、現時点ではベストを尽くしていますが、課題の一つは『重いこと』ですね、マキネンに言われたのは『ちょっと頑丈すぎるよね』と。軽ければもっと戦闘力が上がるので、次期モデルは軽くて頑丈なクルマにする必要があるでしょう。WRCの世界で戦うことでより顕著になっています。かんざしを付けていいクルマにするのではなく、ボディにしてもエンジンにしても“素”のスペックをよくしていきたい。それが理想のクルマづくりだと。現時点でそれができていないのは、われわれの実力としてしっかりと認識しており、次のモデルにつなげていきたい」

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamで唯一の日本人エンジニアである川村倫隆氏は「ラリーカーと市販車の共通性は38%(その中の8%が改修を実施)です。当然、ベース車の素性が上がればそのパーセンテージは上がります。そのために、すべての情報はトヨタ自動車にフィードバックしています。それをやらないとこのプロジェクトの意味がありませんので」と語っている。

ちなみにWRCに復帰しフィンランドラリー終了時点で、ドライバーズランキングはラトバラ選手が4位、コンストラクターズランキングは3位となっているが、友山氏は実質1年半前に開発がスタートしたことを思うと、この状況は夢にも思わなかったそうだ。

「正直言ってしまうと、僕はここまで期待していませんでした(笑)。そもそも今年は『データを取る』『チーム/クルマを強くする』が目標でしたので……。しかし、われわれも想像しない結果で、闘うたびに強いチームに成長しています。その効果は技術面や人材のみならずマーケティングにもしっかりと表れていて、欧州ではSNSで騒がれる反応が一時トップにもなりました」

ちなみにTOYOTA GAZOO RacingのWRCプログラム初年度の目標は?

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