日本株が大きく動き出すのは8月24日以降か 「夏休み」の外国人投資家はどこで動く?

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今回の「ジャクソンホール会合」ではマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が3年ぶりに出席し講演を行う予定だ。これが当面の大きな市場の注目点だ。

ドラギ総裁はここでどんな発言をするだろうか。市場では、ユーロ域内経済への自信が強まり、金融刺激策への依存度が減ったことを示唆する発言が出ると見られている。またECBは秋の定例理事会(9月7日)で、資産購入規模を、現行の各月600億ユーロ規模から縮小する計画(テーパリング)を発表すると見られており、来年1月から規模をひと月100億ユーロずつ削減していくとの観測が流れている。

ECB理事会の約2週間前に開催されるジャクソンホールでの講演は、この方針を示唆する絶好の機会と見られる。2014年のジャクソンホール会合で、ドラギ総裁が資産購入プログラムの導入を示唆したことを考えると、同じジャクソンホールの会合でテーパリングを示唆するのが理にかなっている。かつてベン・バーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長も量的緩和(QE)第2弾を示唆する講演をジャクソンホールで行った経緯もあることから、8月末の会合は注目のイベントとなりそうだ。

「ジャクソンホール会合後の日本株上昇に期待

すでに6月以降、欧州ではテーパリングの思惑が高まっている一方、北米(カナダ、アメリカ)では利上げに踏み切っている。オセアニア地域(オーストラリア、ニュージーランド)では利下げ打ち止め観測が強まるなど、主要国の金融政策は大きく変化している。

変わらないのは「金融緩和の現状維持」を押し進める日本ぐらいなものか。各国中央銀行の方向性に大きな変化が出ているなか、「グローバル・マクロ」戦略をとるヘッジファンドなどは投資資金の組み入れ変更を検討していることだろう。7月以降の日本株の膠着相場はこうしたアセットアロケーションの変更(投資資金の資産配分)が絡んでいるのではないかと考える。

為替市場ではすでにユーロ買い(買い戻しがメインか)が進んでいるが、8月末のジャクソンホール会合にてドラギECB総裁がテーパリングの方向性を明確に打ち出せば、ユーロの上昇トレンドが強まると想定する。

アセットアロケーションがどのように変更されるのか不明だが、足元の好調な企業業績やGDP(国内総生産)など経済指標を考慮すると、日本株に投資資金が流入するのではないだろうか。国内政治に対する懸念は払拭されていないが、需給面をきっかけとした8月末以降の日本株上昇の展開に期待したい。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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