日本のブラック部活動は「ゆとり化」すべきだ 内田良氏×島沢優子氏が語る(後編)

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内田:ここまでブラック部活動についてお話ししてきましたが、これからの設計について、もっと広くみんなで議論していくべきだと思います。『部活があぶない』でご指摘なさっているように、ブラック部活はブラック企業につながっていきます。

島沢:部活問題に向き合うことは、ある意味、社会全体に向き合うことになりますよね。

部活が社会の写し鏡のようなところがある

内田:ブラックバイトもブラック企業も、構造的に同じですからね。

島沢:内田先生の『ブラック部活動』に「部活動についての顧問の負担が重いと思っている先生は80%いるが、保護者は40%しかいない」というデータがあり、興味深かったです。先生にとっての部活動への負担感は、保護者の想像よりもはるかに重いのですね。

内田:そう。そこは保護者のみなさんにも理解してほしい。たとえば、一般企業で働く人たちも周囲の想像以上に仕事が苦しいと思う。

島沢:新聞の書評で『部活があぶない』について「日本の組織に普遍的な処方箋で部活を語りながら日本社会を分析する小論」と書かれていました。ここは内田先生の本も同じだと思うんです。部活が社会の、ある意味、写し鏡みたいなところってすごくありますよね。

内田:子どもの被害、あるいは先生の被害もそうだけれども、日本の企業をそのまま表しているところもありますね。「部活があぶない」は「日本があぶない」、なのかもしれないし、「会社があぶない」かもしれない。だって、そのままつながっているじゃないですか。しかも『部活があぶない』で強調されているように、自分が過ごしてきた環境をよきものと美化してしまうため、ブラックな指導や教育が連鎖あるいは再生産されていきます。

島沢:人材育成とか、組織運営とか、地続きですもんね。

内田:空気とか、文化が、確実につながっている。だからこそ、部活動をしっかり冷却して、未来展望図を描かなきゃいけないですね。

島沢:ブラックな現状を変えるためにも、内田先生にはぜひ引き続き情報発信をしていただけると有難いです。

内田:こちらこそ。島沢さんのように学校の闇を声から拾う人は、なかなかいない。貴重な教育ジャーナリストです。これだけしつこくやれる人はいない(笑)。

島沢:先生も相当しつこいですよ(笑)。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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