日本のブラック部活動は「ゆとり化」すべきだ 内田良氏×島沢優子氏が語る(後編)

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島沢:とはいえ、民間クラブの就労環境も決して整備されていません。学校の先生に無償ボランティアに近い形で負担させている部活とあまり変わらないかもしれません。たとえば、サッカークラブのコーチは年収200万~300万円程度。もっと少ないかもしれない。最近では、30代になり家庭を持つと生活できないので、コーチを辞める人も少なくないと聞きます。

内田:うーん。そうなんですね……。だとすれば、スポーツをもっと市場化しなきゃいけませんね。スポーツ指導で食っていけるようにしないと。ここは国レベルでの設計が必要ですね。

島沢:だと思います。では、民間とのコラボを少し先の未来だとしたら、直近で変革できるとしたらどんなことでしょうか。もし今、文科省やスポーツ庁の方に提案するとしたら?

直近で変革できることとは?

内田:ある程度、公的な仕組みとしてはやりやすいこと。やりすぎる部活動の総量を規定することでしょうか。

島沢:休日を週3回にするとかですよね。そこをきちんと徹底させてほしい。

内田:徹底しなければ、またすぐ過熱します。今やっと文科省やスポーツ省がまめに調査するようになりましたが、それを継続的に調査していくことが必要です。僕のイメージは、なにかこう、ぽわんとした部活動なんです。指導者もそこまでスペシャリストじゃないし、もちろん生徒のほうもそんなに勝ち上がろうとも思ってない。そのゆとりに移れる人と、他方でもっともっとやりたいと思っている人たちがいて、そこをどうやって吸収していくのか。たとえば、厳しいトレーニングをしながらも、どうやって彼らを教育的に育てていくのか。

島沢:つまり、まずは総量を下げる仕組み作りと、指導の中身の変革の2本立てですね。

内田:総量規制をするとしても、これまでと同じ指導をする、つまり一方的な指導で、自ら考える子を育てない指導をしていては、やはり十分ではないんでしょうね。

島沢:そうですね。生徒がそれをやるのを支援する。スポーツだろうが、音楽、ダンスだろうが。それが部活の新しい役割ですね。

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