同期に差をつけるのは、「打算のない本気」だ 職業は「看板」で選ぶべきではない

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「人の役に立ちたい」「国家レベルの仕事がしたい」ということが最終的なゴールだとすると、もう少し具体的に「どういった分野で、何をして」まで落とし込んで考えてみるべきなのでしょう。

美香さんには、最初の職業を通じて将来のキャリアにおける選択肢をできるかぎり増やしたいというお考えがあるようです。

すばらしい考え方だと思います。が、一方でそのような考えであるがゆえに、ラベルや看板ではなく、より具体的に「その場を通じて何を自分は学びたいのか」「そしてそれはどう自分自身の将来の発展性に寄与するのか」といったことを考えていないようです。

外資系金融としか書かれていませんから、具体的に何の職種なのかはわかりませんが、官僚にせよ金融機関にせよ専門性によりかなり細分化されていることは確かです。細分化された専門性が将来やりたいことにつながればよいのですが、関係のない分野であれば、将来の選択肢を逆に狭めてしまう可能性もあります。

たとえばファイナンスとひと口にいっても、エクイティファイナンスなのかデットファイナンスなのかなどいろいろと分野があり、部署も人もやることも異なるわけです。だからこそ、「何の分野で」を考えるべきなのです。

「打算のない本気」を持っているか

外資系金融に行けば何か学べるだろう。そういったスタンスでは何も学べないでしょう。そういったプロファームにおいては、たとえば新卒入社というスタートは同じでも、2年も経てば個人間でスキルや能力で非常に大きな違いが出てきます。

その違いは「打算のない本気」を持っているかどうか、です。

外資系金融に行けばその先どうにかなるのではといった甘い前提を持つのではなく、その場を通じて自分自身の職業人としての価値を向上できることをいかに最大限やり尽くすかを考えるべきです。

国家視点で物事を考えたいから官僚になる。それも本気であれば、官僚でなくともそういった視点を仕事を通じて持つことはできると言い切れます。
実際に私の知り合いにも、民間からの提言として政策策定に寄与した人物が何人もいます。要は本気ならば場所や立場は重要ではないということです。

「人の役に立つ」。そのためには自分自身が価値のある人間になることです。自分自身が弱くては、自分自身に価値がなければ、人の役には立てませんし、口で言うだけでは単なるきれいごと以上にはなりません。

であるからこそ、美香さんには職業を選ぶ際にラベルや場ではなく、具体的にやること、できることベースで選んでいただきたいのです。

繰り返しですが、看板ではなく、やることで選ぶのが職業選びの肝です。
その際に重要なのは、世間の基準ではなく、自分にとって価値があるか否かを見極める自分自身の基準がしっかりとしていることです。

「よい会社」「よい職業」の定義を決めるのは自身自身です。そのような考え方で、美香さんがご自分にとって将来につながるよい職業を見つけられることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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