「生理休暇」ははたして性差別的な制度なのか 低賃金や差別を助長?世界中で議論に

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男女に関係なく休暇制度全体を見直し、慢性疾患を含むさまざまな理由で休暇を取得できるようにするのが望ましいとマーティンは提言する。

パデュー大学准教授(歴史学)で『Under Wraps: A History of Menstrual Hygiene Technology(秘密にされて:生理の衛生技術の歴史)』の著者でもあるシャッラ・ボストラルは、生理は長い間、学校や職場から少女や女性を締め出す言い訳に使われてきたと言う。

ボストラルによると、第2次世界大戦中、生理痛を抱えた女性パイロットが飛行を禁止されることは珍しくなかったという。

オーストラリア・メルボルン大学の研究者カーラ・パスコーは、生理中は無理をしすぎる可能性があるためミシンを使うことや小説を読むことを止められる女性もいたと指摘する。

「こうした歴史的背景により、女性はみな生理で調子が悪くなるという議論が再燃することを懸念している。生理休暇にはそうした意味合いがあると私は考えている」とパスコーは言う。重い生理痛がある女性は休暇が与えられるべきだが、包括的な制度である必要はないというのが彼女の意見だ。

イタリアでも法案が審議中

日本では1947年に生理休暇制度が導入され、生理痛が重い人や仕事によって生理痛が悪化するおそれがある女性には、法律で休暇の取得が認められた。

ただ1986年の調査では、制度を利用する女性は1960年の20%から1981年には13%にまで減少。制度の利用に対する社会的な圧力がその主な理由となっている。

韓国では2001年に生理休暇が認められたが、以来、一種の逆差別だとみる男性からの非難にさらされている。インドネシアでは女性は生理痛のために月に2日、休みを取得する権利があるが、導入は進んでいない。

イタリアではまもなく、生理痛が深刻な女性に月3日の有給休暇を与えることを企業に義務付ける法案の採決が議会で行われる。だがイタリアでも、その法律が女性にとってプラスよりもマイナスに働くのではないかと懸念する声もある。

インドのカルチャー・マシーンで働くセダにしてみれば、そんな議論は馬鹿げている。セダは言う。「もし世界に男性がいなくて、働いているのが女性だけだったら、『生理初日休暇』に目くじらを立てる人は誰もいないだろう」。

(執筆:Aneri Pattani記者、翻訳:中丸碧)
(C)2017 The New York Times News Services 

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