帰ってきたサントリーホールは、話題満載だ 改修工事後の企画には工夫がいっぱい

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大規模改修工事を終え、新たな幕を開けるサントリーホール(写真:サントリーホール)

開館30年を機に、パイプオルガンのメンテナンス等を含む大規模な改修工事を行っていたサントリーホールが、来る9月1日(金)にリニューアルオープンを迎える。「Reオープニング・コンサート」と名付けられたこの日のプログラムはロッシーニ(1792~1868)の「ミサ・ソレム二ス」だ。

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「荘厳ミサ曲」とも呼ばれるこの作品は、自身の室内楽作品である「小荘厳ミサ曲」を管弦楽用に編曲したロッシーニ晩年の大作だ。2台のピアノとハルモニウム、そして12人の歌手のために作曲された「小荘厳ミサ曲(1863年作曲)」についてロッシーニは、“この小さなミサ曲は、老人最後の大罪です。神よ、私を祝福してください”といった内容の謎めいたメッセージを遺し、初演と1回きりの再演以降公開演奏を一切禁止している。

門外不出としたナゾの曲

その後、器楽部分をオーケストラ用に編曲して完成させた「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」に至っては、初演を行わないどころか楽譜すらも門外不出としたのだから天才のやることはわからない。

ちなみにロッシーニは、オペラ作曲家としてヨーロッパ中を席巻していた1829年にオペラ「ウィリアム・テル」を発表。それを最後にオペラ界から引退。40歳を目前にして隠居生活に入ると、その後は美食家・料理研究家並びにサロン経営者として優雅な生活を送っている。

レストランのメニューでおなじみの“ロッシーニ風”という牛フィレ肉にフォアグラを合わせたゴージャスな料理は彼の発案なのだから恐れ入る。そのロッシーニが人生の最晩年、引退から30年以上も経過した後に書き遺した「ミサ・ソレニムス」とはいったいどんな作品なのか。興味のある方はぜひサントリーホールの「Reオープニング・コンサート」に足を運ばれたし。今回の演奏に使用されるのは、2013年にロッシーニ財団から出版された全集版楽譜による日本初演というのもリニューアルオープンにふさわしい成り立ちだ。

というわけで、約半年ぶりのサントリーホール公演を前にして舞い上がってしまいそうだが、これは秋の本格的なコンサートシーズン開幕を告げる序曲のようなもの。ここから始まるすばらしいコンサートの数々をぜひご堪能あれ。

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