日本の総合化学業界 事業環境見通しはネガティブも、格付け見通しは安定的 《ムーディーズの業界分析》

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高水準の設備投資が続くが、適度な財務の柔軟性が維持されるであろう

 格付け対象各社は2006年度以降、コア事業での市場地位を強化するために積極的な成長戦略を実施している。また、各社は株主への利益還元方針を含む慎重に考慮された財務方針を維持している。また、成長のための投資の大半はキャッシュフローで賄われるとみられる。したがって、中期的に適度な財務クッションが維持されるであろう。

 原油価格を含むマクロ経済の状況は、日本の総合化学会社の信用力ファンダメンタルズにとって好ましいものではない。しかし、コスト構造の強化、巧みに構築された事業ポートフォリオ、慎重な財務方針が生み出す適度な財務クッションに支えられ、総合化学会社の格付け見通しは安定的であり、今後12-18カ月間で引き下げ方向の格付けアクションがとられる可能性は限定的であるとみている。

過去1年間の格付けアクション

 ムーディーズは過去1年間で、日本の総合化学会社に対し、いくつかの格付け変更を行った。2007年9月27日に住友化学の格付けをA3からA2に引き上げ、2007年4月27日に東ソーの格付けをBa2からBaa3に引き上げた。これらの格付け変更はいずれも、事業ポートフォリオと収益構造の強化に向けた両社の継続的な取り組みにより、収益とキャッシュフローが強化され、景気サイクルを通してより高い水準で安定化するであろうとの見方を反映している。また、積極的な設備投資が続くにもかかわらず、両社は適度な財務クッションを維持すると見られる点も織り込まれている。

総合化学各社の格付け

(無担保シニア債務格付けまたは発行体格付け)

会社名 格付け 格付けの見通し
旭化成株式会社 A2 安定的
住友化学株式会社 A2 安定的
三井化学株式会社 A3 安定的
三菱化学株式会社 Baa1 安定的
東ソー株式会社 Baa3 安定的
注:2008年6月20日時点
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