東武鉄道「51年ぶりSL復活」、感動の舞台裏 全国の鉄道会社が協力して「鉄道員魂」を継承

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鬼怒川温泉駅を出発するSL「大樹」の営業一番列車(撮影:大澤 誠)

8月10日、昼下がりの東武鉄道・鬼怒川温泉駅前。山あいに雲が垂れ込め、時折雨もちらつく天候にもかかわらず、駅前広場は大勢の観光客らで熱気に包まれていた。人々がカメラやスマートフォンを片手に取り巻いているのは、蒸気機関車(SL)の方向を換えるための転車台だ。

東武鉄道はこの日から、東武鬼怒川線の下今市―鬼怒川温泉(ともに栃木県日光市)間12.4kmでSL列車「大樹(たいじゅ)」の運転を始めた。東武としては51年ぶり、鬼怒川エリアでは58年ぶりとなるSLの運転。転車台は、その見せ場の一つだ。

「生でSLを見たのは初めて。迫力ありますね!」と喜ぶ観光に来た若い夫婦、「昔、国鉄でSLが走ってたときによく乗ったから懐かしくて。乗ってるとススだらけになってね」と昔を懐かしむ地元のお年寄り……。煙を吹き上げながらゆっくりとSLが転車台にやってくると、周囲を取り巻く人々からは歓声が上がった。

汽笛を響かせ一番列車が快走

SL「大樹」は、長年北海道を走っていた1941年生まれのSL、C11形207号機を先頭に、かつて貨物列車に連結されていた「車掌車」ヨ8000形、国鉄時代に製造された青地に白帯の14系客車、そしてSLをアシストするディーゼル機関車DE10形の編成で、土休日を中心に1日3往復運転する。乗車時間が約35分と短めで、日光・鬼怒川地区の観光と合わせて気軽にSLを体験できるのが売りだ。

一般客を乗せた一番列車となったのは、鬼怒川温泉駅14時35分発の「大樹4号」。この日がちょうど10歳の誕生日という地元の小学生、藤原大樹(たいき)君らによるテープカットのあと、迫力ある汽笛を響かせながらSL列車は下今市へと向かった。

一番列車の運転を担当した機関士の仲沼和希さんは、電車の運転歴約27年のベテランで、志願してSLの機関士に。電車とSLの運転は大きく異なり、「鬼怒川線は勾配と曲線が多い路線。SLは勾配には弱いので、スピードを落としすぎずパワーを出すのが難しいところ」という。一番列車の運転を自己採点すると?との問いには「80点くらいですかね」と笑った。

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