ヤマハ、「電子ピアノ」20年ぶり大改良の理由 グランドピアノの弾き心地目指し鍵盤を刷新

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新機構を搭載したモデルは発売されたばかりで客の反応はこれから。ただ楽器店からの反応は、「弾きごたえがよく、もっと弾きたくなる」と評価が高いという。

電子ピアノ市場に対する成長期待は大きい。ヤマハは電子ピアノの販売額で5割もの世界シェアを握る。同社は今2017年度、電子ピアノを含む電子楽器の売上高で前期比7.1%増の889億円を計画する。特に中国での電子ピアノ販売は2016年度に前期比2割の増収を達成、今年度も2ケタ成長の継続を見込む。

新興国を中心にまだまだ市場は広がる

電子ピアノは場所を取らないうえ、室内で弾いても音が漏れにくいため、集合住宅などで根強い人気がある。加えてアジアでは子供の情操教育の熱が高まっている。中国や新興国の学校などでの利用も増えており、市場の伸びが見込まれる。

こうした中、河合楽器やローランド、カシオ計算機などの電子ピアノメーカーの間で競争が激化。電子楽器専業のローランドはシンセサイザーのような製品が多く、カシオは廉価なキーボードで新興国を攻める。一方、アコースティックと電子の両方を手掛けるヤマハと河合は、旗艦製品であるグランドピアノのエッセンスを加えることで、差別化を図っているのだ。

クラビノーバ新シリーズの企画・開発陣。左から2番目が新鍵盤開発を統括した市来俊介主幹、右から2番目が商品企画を率いた阿部征治リーダーだ(記者撮影)

アコースティックピアノは多くの部品が木製であるうえ、組み立ては人の手が中心で製造原価が高く、収益力が高いとはいえない。

ヤマハで電子楽器の企画を担当する電子楽器事業推進部の阿部征治リーダーは、「アコースティックピアノの技術を電子ピアノに活用して利益を稼ぎ、その収益をアコースティックピアノの研究開発にも生かしている」と説明する。

アコースティックピアノと電子ピアノは、互いをうまく補完し合う関係にある。伝統あるピアノに磨きを掛けるべく、ヤマハの挑戦は続く。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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