マツダが「革命エンジン」に込めた強い意地 逆風が吹いても、内燃機関を磨き続ける

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マツダの「SKYACTIV」技術が最初に搭載されたのは、主力SUV(スポーツ多目的車)「CX-5」だった(撮影:梅谷秀司)

エンジンにこだわり続けてきたマツダが、逆風を受けながら、新たな一歩を踏み出そうとしている。

8月8日、同社は新ガソリンエンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)-X」を発表。2019年からこのエンジンを搭載したモデル群の投入を始めることを明らかにした。

ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」、ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」というマツダの看板技術の両方を”いいとこ取り”した新エンジンだ。「X」には、ガソリンとディーゼルの「クロスオーバー」という意味が込められている。研究開発を担当する藤原清志専務は、「技術者にとっては夢のエンジンだ」と誇らしげに語った。

ガソリンエンジンの難点を克服

今回発表された「SKYACTIV-X」はディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」(写真左)とガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」(右)の長所を組み合わせた(編集部撮影)

マツダは長年、ディーゼルエンジンの「自己着火技術」を磨いてきた。空気と燃料を混合した「混合気」を圧縮させて熱エネルギーを生み出し、自己着火させることによりエンジンを駆動させる技術だ。自己着火は旧来の火花着火に比べ燃焼が非常に速く、高いエネルギーを生むため、少ない燃料でも力強い走りにつながっている。

今回のスカイアクティブXの画期的な点は、ディーゼルの自己着火技術を、火のつきにくいガソリンエンジンに応用させたことにある。エンジン開発に詳しい早稲田大学の大聖泰弘・特任研究教授によれば、ガソリンを自己着火させようとすると、温度や速度などの外部要因によっては爆発的な異常燃焼(ノッキング)が起こる可能性がある。このノッキングの制御が技術的にきわめて難しいと考えられてきたという。

スカイアクティブXは、ノッキングが起こりそうになると、スパークプラグが燃焼室内を温めて混合気を高圧縮し、自己着火を助ける。これは「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」とよばれる世界初の仕組みだ。ディーゼルは燃費と加速が良く、ガソリンは排ガスが出にくい。こうした長所を両立できるという。エンジンの燃料消費率(1時間当たりのガソリン消費量)も、先代であるスカイアクティブGより30%改善した。

小飼雅道社長はスカイアクティブXについて「世界初の革命エンジン」と自賛。そのうえで、「走る歓びと環境性能の両方を叶えることで、お客様との絆を深め、マツダのブランド価値を高めていく」と強い意気込みを語った。

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