スパイダーマンが描く勧善懲悪ではない世界

大抜擢された36歳のワッツ監督に聞く

「スパイダーマン:ホームカミング」では、悪役が悪の道には染まる背景が丁寧に描かれているのが特徴だ ©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

手のひらから蜘蛛の糸を自在に飛ばし、高層ビルの間を飛び回る「スパイダーマン」。マーベル・コミックを原作とするヒーロー映画シリーズ、6作目となる今回は『スパイダーマン:ホームカミング』では、15歳のヒーローが抱える葛藤や、誰もが共感できるような悪役が抱く憎しみなど、これまでになく、主要人物の心理描写にぐっと入り込むストーリー設定になっている。

ヒーローが身に着けるスパイダーマンの「パワースーツ」もハイテク化されたほか、蜘蛛の糸が使えない場面での戦闘場面を増やしたりと、アクションの見どころも多い。

監督に大抜擢されたのは、ユーチューブの動画作品などで注目をされ、長編の監督経験が少ない、若手のジョン・ワッツ監督(36)だ。原作ファンを自任しつつ、「これまでにないスパイダーマン作品」を目指したという。

悪者は朝起きた瞬間突然なるものではない

そもそも、「悪役(ヴィラン)が大好き」という監督。今回の悪役、マイケル・キートン演じる「ヴァルチャー」はもとはといえば、ふつうの一般市民で清掃業者だった。スーパーヒーロー、つまり善玉のトニー・スタークから仕事を奪われたことで、悪の道へ入り込んでいく。善と悪とは何か、自分自身が同じ環境にいたら、どうなっていただろうと観客に考えさせるような場面設定だ。

もともと「悪役好き」だというワッツ監督(撮影:尾形文繁)

――今回の悪役は悪の道に染まる背景が丁寧に描かれていて、台詞にも重みがありました。監督が描きたかった悪役とは?

「悪者は朝起きた瞬間に突然なるのではなく、ごく普通の人間が何らかのきっかけがあって、悪者になっていくのではないか。自分自身はいつも悪役に興味があって、悪役の感情を理解したいと思うことが多かった。だから、今回の作品では、悪者になるまでの過程に時間をかけたかった。

今回の悪役、ヴァルチャーが仕事を失ったのは彼のせいではないし、家族があり、自分の会社で働く人もいて、責任もある。しかも、ほかに選択もない。そういう彼を理解できるストーリーにしたかった」

――悪役の背景を理解しようとすればするほど、何が正義で、何が悪かを定義するのも、難しくなります。それは今の世界で抱えるさまざまな紛争や争い、反目にも言えることでは?

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