P&G流、“使える"在宅勤務のコツ 単なる福利厚生と、とらえるべからず!

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実は制度をどう位置づけているかという点に、そのポイントがある。P&Gは在宅勤務を単なる「社員への福利厚生」の枠組みと考えておらず、「成果を拡大する手段」に用いている。

在宅勤務の取得者には、これまでと同等かそれ以上の成果を出すことが求められ、制度の運用に当たっては、社員に成果に即した評価体系をしっかり周知する。取得者側の「自宅で働いた分を正当に評価してもらえるかわからない」という不安や、管理者側の「自宅できちんと稼働しているかわからない」という不信感が生まれにくくなっている。

積極的に管理者から勧める

成長戦略の一環であるだけに、制度の設置後は、制度の浸透にも力を注いだ。これだけの仕組みを作った同社だが、制度のスタート時は利用者数が思うように増えなかったという。そこで2011年から、定期的に行う管理者面接の際に、社員一人ひとりの働き方を点検。効率性の観点から取得が望ましいと判断される社員には、積極的に在宅勤務制度の取得を管理者から勧めていった。

広報・渉外本部の山下浩子スーパーバイザーも、上司に勧められて取得を決めた1人だ。山下さんは、今年4月に育児休暇から復帰し、6月から週1日の在宅勤務を利用している。通勤や身支度の時間を含めると、オフィスに出勤する場合と比べ、約1時間半の余分な時間を確保できる。普段であれば、子どもを寝かしつけた後、深夜まで仕事に追われることもあるが、在宅勤務の日であれば昼間に十分時間を取れるため、毎朝5時起きの山下さんにとっては、健康管理にも大きく役立っているという。

また、仕事をするためのインフラ面でも万全の体制を整えている。P&Gは世界中に拠点があるため、PCでのチャットや通話の社内システムが構築されており、多くの社員が日常的に利用している。在宅の社員が会議に出る際にも活用されており、顔を見たり、資料を示したりしながらのプレゼンテーションも、自宅から十分行えるようになっている。

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