英国「静かな車両」は大声会話も携帯も禁止だ 外国人も「シャカシャカ音は嫌いだった

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Quiet Coachはイギリスに限らず、欧州各地の長距離列車に設定されていることが多い。鉄道会社のウェブサイトで指定席を買う時も、選択肢のひとつとして「Quiet Coachに乗るかどうか」を尋ねられることもある。

筆者がよく利用する郊外電車の車内には、Quiet Coachの定義として次のように記されている。

Quiet Coachは4両ごとに1両、設けられています。これらの車両は平穏と静粛を求める乗客の皆さんのためのものです。乗車の際は、次のようなルールをお守りください。
・携帯電話の使用は禁じます。通話をしたい方は別の車両に行ってください。
・すべての電子機器は「マナーモード」に設定してください。
・もし、他の乗客とお話をされる際は、できるだけお静かに、他の乗客の皆様への配慮をお願いします。

(ロンドン東部と郊外をつなぐ鉄道c2cの車内に掲げられた案内を参考に筆者作成)

 

もっともこれを破ったところで罰則はない。日中の閑散時に乗ったらQuiet Coachの乗客が他にほとんどいなかったことから、男性がケータイで大声でおしゃべりをしていた。ただ、ピーク時にこんなことをしたら車両からつまみ出されることだろう。

説明を遵守するとしたら、日本の新幹線の車内で敬遠される「オバちゃんグループのおしゃべり」はQuiet Coachでの禁止事項のひとつだ。構わずおしゃべりを続けようものなら、初老の紳士が慇懃な言葉遣いでたしなめることだろう。

機能不全に陥った路線も

日本に限らず、どこの国でも「優先席に座るべきでないような乗客」が平気で座っていることがよくある。Quiet Coachについても同じようなことが起こる。もっとも、そんなルールや車両の存在を知らない、という人もいるようだが。

ロンドンでは、地下鉄車内でケータイを使ってもとがめられることはない(ジュビリー線の地上区間で、筆者撮影)

「静かに移動のひと時を過ごしたい」という人と揉めるケースとしてよくあるのは、ヘッドフォンからの音漏れだという。いわゆる「シャカシャカ音」はイギリスでも結構嫌がられている。

Quiet Coachの中で、「シャカシャカ音」の発信源となる乗客に向かって、ある乗客が業を煮やして「そんなに音楽を聴きたいなら他の車両に行けば!」と注意したところ、言われた方はそれに逆ギレ。やむなく、車掌が調停に入ってようやく事が収まったこともあるという。しかし、鉄道運行事業者によっては、こういった車内での乗客間の「黙れ、止めろ」「何言ってんだ、オマエ」的な揉め事があまりにも多いことから、Quiet Coachの設定そのものを断念した例もある。

次ページQuiet Coach以外の車両では何が起こるか
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