元プロボクサー「余命1年宣告」で見た地獄 なぜ2人の医師は見過ごしたのか

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──本に「僕はネガティブなタイプ」とあります。「もう終わりだ」と天を仰ぐ場面も何カ所か出てくる。でも効きそうと思う療法はとにかく試すポジティブな患者でした。

免疫療法にしてもビワの葉療法にしても食事内容の変更も、女房がとにかくネットや本で調べまくってくれたんですよ。僕自身は現役時代からネガティブ思考で、試合が決まると「絶対勝てない、どうしよう」と練習に向かったタイプ。でも今回は負けイコール死でしたからね。

免疫力を高めるには笑うのが一番、と女房が調べてきて、お笑いのDVDをいっぱい借りてきて無理やり笑ったりしてた。手術後の病理検査の結果でいい報告を受けたとき、やっと自然に「え~、マジですか!」と笑えた。残りの人生、作り笑いでも何でも、笑っていたほうがいいな、笑っていかないとダメだなと思った。

──手術後3年経って、新膀胱との付き合いには慣れましたか?

そうですね。新膀胱は小腸を50センチメートル切って袋状の膀胱にする最先端の方式。尿意はなく、2時間おきの排尿など管理が大変です。でも最近はたまったのを感じるようになった。初めは新膀胱がまだ小さいので2時間おきだった排尿も、今は夜は3時間おき。トイレで2分くらい目いっぱい腹圧かけて、脳の血管切れるんじゃないかってくらい踏ん張る。細切れ睡眠にも慣れました。定期検診は半年ごと、仕事は完全復帰。ゴルフもよく行くようになりました。

何年生きるかではなく、どう充実して生きるかを考える

──今、大事にしてることは?

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今の僕は何年生きるかではなく、どう充実して生きるかを考えるようになった。大事にしているのは「食事」「運動」「笑う」です。食事は添加物を避け、有機野菜中心の和食に切り替えた。体は冷やさない、そして免疫力を高めるためにいっぱい笑う。女房が調べてきてよさそうな療法は、とにかく試しました。手術前に本気で生活を変えましたから。手術後の病理検査の結果で、骨盤リンパ節に2カ所転移していたがんが消えていて、抗がん剤がよく効いたのと何らかの免疫機能も働いたんでしょうね、と先生に言われましたよ。

闘病中に書いた「退院したら達成すべき10個の目標」は、ホノルルマラソンは走ったし、広島カープ戦の始球式も出たし、旅行も行ったし、半分以上実現した。でも目標はクリアしてもどんどん作っていかないと。達成したら死んじゃいそうな気がするんです。僕は強い人間じゃないですから(笑)。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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