安倍改造内閣で「財政運営」はどう変わるのか 年内の大きな政策転換は考えにくい

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報酬改定をめぐる利害対立は表面化しやすい時期とはなるが、それを乗り越えて社会保障改革を着実に実施できれば、国民の政権に対する評価も高まる。そこで合意形成にしくじると、内閣支持率も高まらない。まさに今年は、社会保障、特に医療と介護で、重要な意思決定を行わなければならない局面となるだけに、政権として冒険的な奇策で国民の関心を引くことは避けるだろう。

そして、社会保障、それは広い意味で子ども子育て支援も含んで、そのあり方について、与野党の間での相違も、関心を集める季節にもなるかもしれない。折しも、9月1日には民進党の代表選挙が行われる。選挙期間中には、民進党が新代表の下でどのような政策を打ち出すかも、当然議論されることとなる。

社会保障や雇用政策では左派的なスタンス

ただ、民進党は、安倍内閣の政策との違いを打ち出すことに、なかなか苦労することになるだろう。というのも、安倍内閣の政策は、憲法改正などでは右派的なスタンスを露骨に見せるものの、対照的に子ども子育て支援を含む社会保障や雇用政策では、左派的なスタンスをにじみだしている。看板政策の「一億総活躍」でも、そうである。

安倍内閣では、残業規制の強化や非正規雇用者の処遇改善、そして官民対話を通じた賃上げ要請など、労働組合が望む政策を、次々と実行に移している。もちろん、自民党は労働組合の支援を全面的に受けているわけではないが、安倍内閣では進んでこうした施策に取り組んでいる。また、さまざまな思惑はあるものの、教育無償化や待機児童解消にも、さらに力を入れようとしている。子育て世帯に目配りしていることを、積極的にアピールしている。

こうした安倍内閣の政策を踏まえると、民進党が社会保障や雇用の政策面で、安倍内閣との違いを目立たせるのはなかなか難しい。民進党の新代表の下で、新たに大胆な政策・財政支出を打ち出し、安倍政権との差異を出そうにも、政権与党側からはその財源が心許ないと、簡単に批判できてしまう。

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