JR北海道「自身のリストラ」の進展度合いは? 札幌駅ビル株売却、新型車両断念し資金捻出

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本業の鉄道事業でも安全以外の部分で、投資計画の撤回やコスト削減が進んでいる。札幌―函館間など非電化区間のスピードアップを目的に開発中だった「キハ285系」は、試作車を1編成造ったものの、従来の車両を増備するほうが安上がりでメンテナンスもしやすいという理由から開発を断念。代わりに既存車種「キハ261系」が引き続き導入されることになった。これによって155億円の投資削減効果があったという。

西野史尚副社長(記者撮影)

人件費にもメスを入れた。平均年収は500万円を切る水準まで低下した。自治体からは「JR社員の給料が高い」という批判もあるが、「道内の自治体の平均年収で当社を下回るのは利尻町のみ」と、西野副社長は反論する。もちろんJR各社と比べても最低の水準だ。

会社発足時に1万3000人いた社員数は現在7000人へと半減。1990年代には早期退職制度により会社を去った社員が多数いたが、最近では低い給与に嫌気をさして退職する20~30代の社員が増えているという。2011年に19人だった自己都合退職者は年を追うごとに増え、2016年度には106人が会社を去った。

鉄道員(ぽっぽや)は給与水準など気にせず鉄道を愛していると思っていたが、職種によってはそうでもないようだ。橋やトンネルの修理といった土木系、あるいは事務系の仕事はゼネコンや役所でも変わらない。最初は高い志を抱いて入社しても、給料が下がり、会社の先行きが不安視される中では、同じ仕事内容でも給料がよく、転勤もないゼネコンや自治体に転職する人も出てきてしまうという。

給与の低下は新規採用にも影響が出る。現在の新卒内定者は予定数の6割程度にしか届いていない。JR北海道といえば、道内のリーディングカンパニーとして、就職人気でトップクラスを誇っていたが、今やその面影はない。

イールドマネジメントは道半ば

このようにコスト削減や資産売却の取り組みは本格化している。では、収入拡大の取り組みはどうか。

JR北海道は、需要に応じて運賃を弾力的に変えることでトータルの収入を増やす「イールド(収益)マネジメント」をスタートした。

たとえば2016年3月に開業した北海道新幹線の開業初年度の利用者は1日平均6300人。当初は1日平均5000人程度と予想していたので、「想定を3割上回った」と、さかんにアピールされた。

しかし、1年間で得た収入は当初計画の105億円をやや下回る103億円という結果に終わった。

JR北海道側は「柔軟な割引により1人当たり単価は減ったが、割引により利用者が増えた」とイールドマネジメント効果を強調するが、「利用者増は(50歳以上が対象の)大人の休日倶楽部パスなどフリーパス利用者の増加によるものではないか」(道内観光関係者)という指摘もある。実際、収入が想定に届かないのはイールドマネジメントが適切でなかった証拠だ。精度を高めるためには経験を重ねる必要がある。

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