外国人を呼ぶのは「カネのため」と割り切ろう 「鎖国」のままでは地方から崩壊する

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これからの日本は、労働人口が激減するというのはすでにご存じのとおりです。それを乗り切るためには生産性を向上させるしかありませんが、日本の生産性は過去25年間、ずっと低迷を続けています

「そこはロボットやバイオテクノロジーなど日本が誇る技術力でカバーする」と楽観視する人もいますが、世界中の国がITを活用して生産性を向上させてきた中、日本はそれができていません。なぜ今度はうまくいくと確信がもてるのか、私にはわかりません。

残念ながら、このままでは日本経済が大打撃を受けるのはもはや時間の問題という、厳しい現実があるのです。

「鎖国」をやめないと「地方」がもたない

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すでにその兆候は「地方」にあらわれてきています

東京や大阪という都市部にお住まいの方はなかなかピンとこないでしょうが、労働人口も減って、大企業の工場もないような地方の小さな町などは、すでに壊滅的なダメージを受けています。

そのような地方をかつて救っていたのが「観光」でした。とはいえ、それは「国内観光」ですので、日本人の数が減ってきている今、かなりの悪影響を受けています

そうなると、残された道は「外国人観光客」を招くしかありません。日本人にかわって外国人に消費してもらうしかないのです。

これこそが、「外国人なんかにたくさん来てもらっても迷惑なだけ」「日本人のやり方に従う外国人だけが来ればいい」という主張が、日本の現実を直視していない感情論だというゆえんです。

数年前まで日本の観光産業はほぼ「鎖国状態」でしたが、それでも観光産業はそれなりに元気でした。それを可能にしたのは1億2000万人を超える人口以外の何物でもありません。

そんな人口規模、戦後の人口激増という「強み」がなくなっていくわけですから、衰退していく道か、「開国」する道かを選ばなくてはいけないというのは、ご理解いただけるのではないでしょうか。

こういう厳しい現実があるので、私はかねて日本のインバウンド戦略は「稼ぐ」ということに主眼を置くべきだと主張してきました。

さまざまな方から、「文化や心を大切にする日本人と違って、欧米人はすぐにカネ、カネと騒ぐ」などと批判されてきましたが、「稼ぐ」ことができなければ地方を潤わすこともできません。それはつまり、財源不足でボロボロのまま放置されている地方の貴重な文化財や、美しい自然の保護・継承ができないということです。

だからこそ、日本政府も2020年に4000万人という「国際観光客数」目標だけではなく、8兆円という「国際観光収入」目標も設定しているのです。これは「1人当たり20万円」ということです。

観光庁によると、2016年の訪日外国人の平均支出金額は15万5896円ですから、20万円という目標を達成するために、政府は中国や韓国など「アジア諸国以外」の外国人観光客の誘致に力を入れています。これは、「稼ぐ」ということでいえば理にかなった戦略といえます。

アジアからの訪日外国人の平均支出額は15万0020円ですが、「アジア以外」からの訪日外国人の平均支出額をみると18万6840円と跳ね上がっています。「稼ぐ」ということに主眼をおけば、このような「上客」の比率を上げて、全体の客単価を上げていこうというのは、ごくごく合理的な判断なのです。

しかも、もっと言えば、この戦略は非常に「いいところ」を突いています。日本には「上客」がまだほとんど訪れていないと言ってもさしつかえない状況だからです。

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