「辞任」「解任」続出で混迷深まるトランプ政権 ホワイトハウス中枢で止まらぬ人事の混乱

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プリーバス氏は2011年から共和党全国委員会(RNC)の委員長を務めており、当時、RNCで報道担当をしていたのがスパイサー氏である。プリーバス氏は中西部ウィスコンシン州の地方政治に深く関与しており、保守系有権者の草の根運動であったティーパーティー(茶会党)運動が全米各地に広がった2010年中間選挙では、ウィスコンシン州でも共和党のスコット・ウォーカー州知事候補やロン・ジョンソン上院議員候補の初当選に大きく貢献していた。また、ポール・ライアン下院議長も同州第1区選出の下院議員であり、ライアン下院議長との関係も良好であり、それだけに、ホワイトハウスと議会共和党との橋渡し役を期待され、プリーバス氏を大統領首席補佐官に起用した背景があった。

共和党内の意見対立が激化

しかし、RNC委員長として選挙での政治資金調達や党勢拡大に取り組んできたプリーバス氏には議会折衝の経験がほとんどなく、加えて「共和党内の意見対立」という大きな制約があった。

1月3日に招集された第115議会(~2019年1月)でトランプ政権と議会共和党指導部が最優先で可決を目指したのは、医療保険制度改革法(通称、オバマケア)の撤廃と置き換えを目指す代替法案であった。だが、オバマケアにより生じている財政支出を削減するには撤廃すべきとの立場の保守派議員と、無保険者を大幅に増加させるという低所得者層の切り捨てはすべきではないとの立場の穏健派議員との間で、共和党内での意見の対立が激化。その結果、上院では、オバマケア撤廃法案も代替法案も一部撤廃法案も、いずれも共和党議員の一部が離反してすべて否決。ついに7月28日には、上院でのオバマケア見直しを事実上諦めざるを得ない状況に追い込まれた。

共和党がホワイトハウス、上院、下院のすべてを支配しているにもかかわらず優先法案を可決できない現状にトランプ大統領は不満を募らせていたが、それがプリーバス氏やスパイサー氏の在任わずか半年余りでの辞任の伏線であった。つまり、共和党主導の上院におけるオバマケアの見直しが膠着状態に陥る中でホワイトハウス中枢の人事を巡る混乱が明らかになったことは、決して偶然ではない。

ホワイトハウスと議会との橋渡し役を期待されていたプリーバス氏の辞任で懸念されるのは、トランプ政権と共和党主流派との今後の関係である。

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