(このひとに5つの質問)松井道夫 松井証券社長

(このひとに5つの質問)松井道夫 松井証券社長

日本でオンライン株取引が始まり来年で10年。そうした中、業界の先駆けだった松井証券の存在感は低下している。成長は限界なのか。松井社長がシェア奪還の方策を語った。(『週刊東洋経済』9月8日号より)

即時決済取引の導入で個人投資家を取り込む

1 個人投資家の株式委託売買代金シェアが伸び悩んでいます。

 SBIイー・トレード証券や楽天証券といった競合が委託手数料をどんどん引き下げる中、当初われわれはそれを静観していた。

 だが、実際にライバルとのシェアが開き始め、私は焦ってしまった。昨年、手数料引き下げに踏み切ったが、結果的には失敗だった。

2 シェアを奪い返せなかった原因は何だと思われますか。

 (手数料引き下げだけでは)差別化にならなかったからだ。ライバルとのシェアにこれだけ開きが出た背景には、(1日に何度も株の売買を繰り返す)デイトレーダーの存在がある。インターネットで株式売買する個人投資家のうち、特に彼らの売買規模が大きい。

 松井証券でも売買代金の4割をデイトレーダーが占める。うちよりも手数料が安いネット証券だと、その割合はもっと高いだろう。デイトレーダーが手数料の安い競合へ流れたのは誤算だった。

3 手数料での差別化は難しいだけに、シェア逆転も困難では?

 名目の取引口座数を競い合っても、そんなに効果はない。逆転するためにはデイトレーダーを取り込む必要がある。われわれが立ち上げる私設取引システム(PTS)では、この秋以降に「即時決済取引」サービスを始める。

 業界初の即時決済で、現金と株式決済の時間差がなくなる。この特徴を生かせば、従来できなかった同一銘柄の同日回転売買が可能になる。同じ銘柄の値動きをずっと見ているデイトレーダーには好都合だろう。手数料コストも重視されるが、売買の利益を含めてみれば、資金効率は即時決済のほうが高いはずだ。

 ただ、これは従来からあるネット証券の競争の延長上でしかない。個人投資家が保有する株式約110兆円のうち、ネット証券主要5社の預かり資産は10兆円程度。投資信託も含め、ネット経由でもっと個人資産を取り込まないといけない。

4 しかし、ネット経由での投信販売は伸びていません。

 野村証券のような大手証券会社と同じやり方を持ち込んでいるからだ。ネットの基本は「売らない」こと。メニューを提示してもセールスはしない。誰にでもわかりやすくシンプルな仕組みが必要だ。

5 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と資本業務提携交渉中です。売れる仕組み作りには欠かせませんか。

 必要なのは銀行の商品ではなくて顧客基盤。これを活用して顧客中心のネットワークを新たに作りたい。MUFGとは年初から交渉を継続しているが、提携相手としてこだわっておらず、焦る理由もない。決断のときは必ず来る。

まつい・みちお
1953年生まれ。76年一橋大卒、日本郵船入社。87年に義父の経営する松井証券へ入社。90年に常務取締役、95年から現職。98年に日本で初めて本格的なインターネット株取引を開始した。

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