「折り畳みケータイ」は、絶滅の危機にあった OSは駆逐、部材も入手困難、どう乗り越えたか

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iモードはベースとなるOSの一つに「Symbian」を用いていたが、開発を主導するノキアの端末部門がマイクロソフトに売却された2011年を境に、開発が縮小していった(筆者撮影)

開発が止まったOSを採用するメーカーは日本のような例外を除いてほとんどなく、携帯電話の部材を開発するメーカーも、ニーズがない古いOS向けの部材を製造することはない。

日本ではこうした部材が手に入らなくなり、従来型の携帯電話が絶滅する危機を迎えていたのだ。

だがシニア世代を主体とした日本での携帯電話人気は非常に高く、かたくなにスマホに乗り換えないユーザーも多い。

そうした強いニーズに応えるべく、携帯電話会社とメーカーは、スマホの部材を活用できるAOSPをベースとした携帯電話の開発に踏み切り、継続的に販売できる体制を整えたわけだ。

携帯電話ユーザーは今後も安心?

中身が大きく変わった携帯電話だが、従来の携帯電話に可能なかぎり近いインターフェースを実現しており、携帯電話ユーザーも違和感なく乗り換えられるようになっている。

Wi-Fiで携帯電話の画像をテレビに転送するauの新サービス「テレビde写真」。こうした機能を実現できるのも、ベースがスマホと同じだからだ(筆者撮影)

加えてベースはAndroidと同じであることから、スマホで人気のメッセージアプリ「LINE」などがリアルタイムで利用できるメリットも生み出している。

近年、携帯電話会社はスマホユーザー向けに、動画見放題や音楽聴き放題、雑誌読み放題など、多様なサービスを打ち出すことで、スマホへの乗り換えと通信料収入の増加を狙ってきた。総務省も新しいICTサービスの利用を促進する観点から、携帯電話ユーザーに「早くスマホへ乗り換えてほしい」と考えているようだ。

だが、OSを変更したことによって端末を安定供給できる体制が整っただけに、今後も旺盛なシニアのニーズに応えるべく、携帯電話の販売は継続されそうだ。

佐野 正弘 モバイルジャーナリスト

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さの まさひろ / Masahiro Sano

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける

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