太陽電池・世界大バトル! 台頭する中国・台湾、半導体・液晶での成功を三たび再現へ

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そもそも台湾が半導体と液晶パネルの産業振興で成功を収めた要因は、生産ノウハウが露光装置などの生産設備に組み込まれ、装置メーカーが販売する市販の製造装置さえ導入すれば大量生産が可能な構造に産業が変化したからだ。この装置産業化が、太陽電池では半導体や液晶パネル以上に急速に進もうとしている。今や台湾などの新興企業にとって、太陽電池は高技術の薄膜系であっても極めて参入しやすい分野となりつつある。

「太陽電池の生産技術を習得するのは、半導体よりもずっと簡単だ。半導体の生産には400~500工程が必要だったが、太陽電池は20しかない」。そう語るのは、ネクスパワー・テクノロジーの王修銘社長。同社は半導体ファウンドリー(製造受託業者)世界2位・UMCから分社化された薄膜太陽電池メーカーだ。07年6月の業界参入から1年足らずで製品出荷を開始、今後は年100~200メガワットの能力増強を重ねて14年ごろには生産能力1ギガワットに達する見通しだ。

創業ほやほやの新興メーカーが「太陽電池製造は実に簡単」とサラリと言う裏側には、製造装置メーカーの存在がある。ネクスパワーは日本のアルバックから製造ラインを一括購入、ライン稼働時にはアルバックから技術指導など手厚い人的支援も受け、短期間で生産を軌道に乗せつつある。

ネクスパワーの製品の変換効率はライン稼働当初からアルバックが保証する7%に達した。シャープが開発に成功した10%には劣るが、欧州市場から09年の増産予定分まですべて受注を獲得している。

「今後もアルバックの技術支援を受け、09年には変換効率10%が実現できそうだ。これはシャープが数十年かけて達成した水準だ。われわれはまだ1年だが、急速にキャッチアップできる」。広大な工場用地に響く増産の槌音を聞きながら、王社長は自信に満ちた口調で語った。

臨界点は2010年 日本市場も強化

中国・台湾勢に死角はないのか。

「10年にわれわれ新興勢力の淘汰期が来る。現在(台湾で)二十数社ある太陽電池メーカーのうち、残るのは片手ほどだろう」。台湾メーカーのある関係者は断言する。相次ぐ新規参入に加え日本など先進国メーカーの増産体制も整う10年には、太陽電池の価格下落が進み、本格的な市場競争期が来るとみているのだ。

「(中国・台湾メーカーの多くは)現状が参入過多であり、市場が伸びてもいずれは過当競争が免れないと認識している。会社の存亡を懸けて、価格競争を続けるしか道はないと考えている」(野村総合研究所台北分公司の田崎嘉邦・副総経理)。

生存の臨界点を控え、中台勢は日本市場にも目を向けつつある。サミットを前にした福田首相が、補助金制度を復活させて住宅向け太陽発電市場を振興する方針を示したのも呼び水となっている。

たとえばサンテックは06年に買収したメーカーのMSKを営業の足場とし、08年に日本市場に参入している。一方、MSKが買収される際に、従業員が福岡工場を買い取り設立したYOKASOL(ヨカソル)とは、モーテックが07年から資本提携を結んでいる。「現地市場参入と、日本の高い技術の習得が目的」(モーテック社長室)と言う。

中国・台湾の新興勢力が攪乱した日本のお家芸。ここに来て米インテル、韓国・現代グループなど大手も参入を表明している。太陽電池市場の覇者をめぐる競争はますます激化していく。

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(週刊東洋経済)
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